「頼んでいい場合もある」
僕はそう思っています
(1)
世のため人のためになり、その作業のために割く時間と労力が軽微で、自身の「看板」を傷つけない場合。
(2)
世のため人のためになり、その作業のために割く時間と労力は甚大だが、その成果がもたらす社会的意義は大きく、その功績が認知、賞賛される可能性がある場合。
(3)
依頼を受けた作業と目的が、自身が挑戦してみたかった方法を試すチャンスである場合。
よくあるトラブル
こうして請け負った時に限って起こりがちなのが、
(1)
軽微な作業と思って請け負ったら内容が不明確で、結局企画書からつくる羽目になった。
(2)
世のため人のためと思ってやったら、ある人の手柄になっただけ。
(3)
打合せしていくうちに自分のアイデアは活かせない事が判明。でも今更プロジェクトから抜けることができなくなった。
などなど。
依頼側との「想い」の違い
頼む人はたいてい友人、知人やその紹介なので、相手の取り組みの温度差や裏事情が、感情的な行き違いに発展して人間関係をも壊してしまう。そうした苦い経験が「プロは無償で仕事を請けてはいけない」という気持ちにさせるのかも知れません。
クリエーターが代金を取らないのに仕事を請け負う事があるのは、個人的な理由でその仕事に価値を見出す時であり、本人以外にはわからない動機が働いて、無料奉仕であってもその仕事に大きな精力を注ごうとする時です。
それに対して「テキトーに作ってよ」と言うのは、まったくやる気を奪ってしまいます。人にものを頼む時は、言葉を尽くして正確にオーダーを伝えることが肝要ですが、いわんやタダでものを頼むならば更に熱意を込めて伝えるべきでしょう。
依頼する人は終始熱意を
事細かなオーダーをするには具体的な企画、計画がなければできません。たぶんタダ働きする人の数倍働かなければ具体的なオーダーを作る事は難しいことです。
知り合いや友人からの依頼
映像制作業をやっていると、写真撮影とかホームページ制作だとかを知り合いに頼まれることがあります。会社では本業である映像制作以外は原則引き受けない主義ですが、個人的には「僕はその方面では素人ですよ」と断った上で引き受けることは、ままあります。
もちろん素人というのは謙遜のつもり。いくらか門外であっても、自分の知見を持って一定以上の価値を提供できる自信があることだけ引き受けます。
そして、たまには無償で引き受けることもあります。
プロがタダで仕事をするとろくなことはない
こうした無償の仕事を引き受けると、往々にしてクリエーターは傷つき、発注者との人間関係が壊れてしまうことが多いものです。
なぜクリエーターは傷つきやすいのか
なぜ無償の仕事をするとクリエーターは傷つくことが多いのか。
クリエーターの仕事は、ギャラが安いほど「思い入れ」は強いからです。
誤解しないでくださいね、あたりまえですがギャラがいい仕事のほうが思い入れの総量は遥かに多いです、普通は。無償の仕事は簡単に言えば、只でもやってみたいと思うくらい、やってみたかった仕事。金銭的には少なくとも、自己満足を大きな報酬と思って引き受ける仕事です。
誰でもやってしまう、あるまちがい
誰でも知人、友人に「ある筋のプロ」がいて、1度や2度は何か仕事を頼んだことがあるでしょう。例えば大工さんとか自動車の修理屋さんとか・・・。
その時あなたは言わなかった(思わなかった)でしょうか。
「安くやってもらうんだから、適当でいいからね。手間とらせたら悪いから」
「(いくらか支払う場合、内心)仕事回してやってんだからありがたいだろ。」
適当な仕事をするプロはいない
どんな職業であろうと、その道の職人ならば信用問題なんだから「適当な仕事」なんて有り得ません。また、じつは知り合いがくれた仕事ほど面倒くさくて、ぜんぜんありがたくないこと、誰でも経験あるのではないでしょうか。
クリエイティブワークだって「適当な仕事加減」なんてありません。そんなことをしたら本業の信用が傷つきます。友達の頼みだから、面倒になることはわかっていても引き受けてあげてることが多いのです。
でも引き受けた以上、喜んでもらえるように頑張るのだから、それも無償でやるんだから、頼んできた人に喜んで貰えなかったら、何の為にやっているのかわかりません。
あなたのためとは限らないことも多い
さらには、その作業は決して頼んできた人のためでなく、世の中にムーブメントを起こしたいという情熱で引き受けることもあります。そんな壮大な夢を抱いているクリエーターに、「適当に」などとは言ってはいけません。
永遠に交わらない虚しい想い
かくして「適当にね!と言う依頼人と、「いい仕事にしないと、まったく何の為にやったのかわからないクリエーター」は、永遠に気持ちが交わらないのです。
以前書きましたが「著作人格権」については、むしろこうした案件の場合こそ尊重してもらわないと、クリエーターは全く報われないということ、お分かりいただけるでしょう。
僕は傷つかない
それは、世の中そんなもんだということを思っているからです。
他人の痛みに想像力が働かない人は世の中に一定数必ずいる。
そう思って割り切って臨めば、無用な軋轢を避けられます。
思い入れる範囲は限定しておくこと。
広げすぎると傷口は大きくなります。
本業に響きますので、無償の仕事はほどほどにしておきましょう。
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