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Tomizo Jinno

「動画クリエーター」という職業

「動画クリエーター」という言葉を、近年頻繁に耳にするようになりました。YouTubeに自作の動画を投稿し、それによって生計を立てている人々を指す言葉として定着しつつあります。しかし、この「動画クリエーター」という言葉には、実は様々な解釈が存在し、職業としての動画制作の専門性を軽視する傾向が見られます。


YouTubeに投稿されている動画を見ると、確かに「動画」であることは確かです。しかし、その多くは、特別な機材や技術を用いずに、手軽に撮影されたものであり、映像制作の技術的な側面というよりも、むしろ「コミュニケーション」や「自己表現」の側面が強く打ち出されています。例えば、ハウツー動画やチャレンジ動画など、視聴者を楽しませたり、役立つ情報を提供することを目的としたコンテンツが多数を占めています。これらの動画製作者は、確かに「動画」を制作していると言えるかもしれませんが、必ずしも「映像クリエイター」と呼べるのかどうかは疑問が残ります。


一方、プロの映像制作者が手がける映像は、これらとは全く異なるプロセスで作られます。クライアントの要望を聞き取り、企画段階から綿密に計画し、撮影、編集、音響効果の付加など、様々な工程を経て完成させます。特にBtoB向けの映像制作では、製品やサービスの特性を理解し、それを効果的に伝えるための戦略的な思考が求められます。例えば、企業の新しい技術を紹介する映像であれば、その技術のメリットを分かりやすく伝え、視聴者の心に響くようなストーリーを構築する必要があります。


この両者を比較すると、「動画クリエーター」という言葉が、プロの映像制作者の仕事内容を矮小化しているように感じられます。手軽に動画が制作できるようになった現代において、誰でも「動画クリエーター」を名乗ることができるようになった一方で、プロの映像制作者が長年培ってきた技術やノウハウが軽視されている現状は、非常に残念です。


例えば、私が最近手がけた2Dアニメーションによる商品PRの仕事では、3分の作品のシナリオ・絵コンテを作るために3日間の時間を費やしました。これは、単に絵を描くだけでなく、シナリオを書き、絵コンテを作成し、キャラクターデザインを行い、背景画を描画して一つの作品に仕上げるという、非常に手間のかかる作業を要するためです。この作業は、単にカメラを回して素材を繋ぎ合わせるだけではない、高度なクリエイティブスキルと技術力が要求されます。


しかし、世の中には「動画を撮ってYouTubeにアップする」という行為を「クリエイティブな仕事」と捉え、それを「動画クリエーター」と呼ぶ風潮が根強く存在します。もちろん、誰でも自由に映像制作を楽しむことは素晴らしいことです。しかし、プロの映像制作者が行っている仕事と、アマチュアの映像制作者が行っている仕事を同列に扱うことは、プロの仕事に対する敬意を欠く行為と言えるでしょう。


私は映像制作という仕事は、単に「動画を作る」という行為を超えた、高度なクリエイティブ活動であると考えています。そして、プロの映像制作者は、クライアントの要望を的確に捉え、それを映像という形で具現化する専門家であると言えるでしょう。

「動画クリエーター」という言葉が広まるにつれて、その言葉の意味が曖昧になり、プロの映像制作者の仕事が軽視される傾向が強まっているように感じます。しかし、私はこれからも、プロの映像制作者として、より良い作品を作り出し、映像制作の価値を世の中に広めていきたいと考えています。




「動画クリエーター」という職業
「動画クリエーター」という職業

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