ビデオ用語でもあるOVER SHOOT
撮影したり編集する時に、映像信号にノイズや乱れが入らないように管理する機器のひとつが「波形モニター」。映像信号は電気信号ですので、ビデオエンジニアはその状態変化を時系列・連続的な波形画像で観察することで、異常を見つけ、不正な信号を排除するよう調整します。乱れた波形のままメディアに記録すると、後で再生したり編集する時に、画像が正常に表示されないことがあるためです。
異常波形
その不正信号(波形)のひとつが「オーバーシュート」と呼ばれる、信号の突出です。正常値とされているレベルを瞬間的に超える現象で、実際にテレビモニターで見ると、黒と隣接する白い部分の輪郭が突出して白い(明るい)というような症状となります。
デジタル時代に入りあまり気にしなくなった
今は映像信号もデジタルなので、様々な自動調整回路が予め仕組まれていて、私たちの現場では波形を気にすることも減りましたが、アナログの時代には編集時にVTR機材がテープを受け付けてくれないとか、放送局の規定で規定外信号を含んだテープは入稿を断られるということがありましたので、スタジオ撮影や編集の現場には、必ず波形モニターがありました。
映像技術用語かも知れない!?
さて、今世間を騒がせている新型コロナウィルスの感染拡大について、感染者が突然爆発的に増えると、グラフは上記の映像信号のオーバーシュートと同じような波形を示すことになります。Over Shootという用語は金融業界でも使われるようですので、どこが語源なのかわかりませんが、Shoot という単語を見ると、撮影=shootingですので、もしかしたら映像技術の世界が語源なのかも知れません。
OUTBRAKE
ところで、アウトブレイク(outbrake)という単語も聞いたことがありますよね。これも「ある日突然爆発的に増える」みたいな意味で使われます。では、Over Shootと同じなのか?と言うと、outbrakeは、それまで気にしていなかったのに突然、というような意味で使われることが多いのに対して、Over Shootは、ある程度予想していたが、その予想レベル、あるいは許容レベルを超えて突然、というようなニュアンスではないでしょうか。
日本語にできるのか?
河野防衛大臣が「日本語で言えばいい」と発言したそうですが、こうしたニュアンスをうまく伝える日本語ってあるのでしょうか?
外来語が日本語の中に入り込むのは、それなりに理由があって、その言葉が持っているニュアンスを日本語にすると、やたら長くなるとか、ちょっと意味が違ったりということが起こるからではないでしょうか。
感染症における「オーバーシュート」
英語ネイティブの国の感染症業界?ではこの表現は使わない、日本語英語であるという指摘もあります。ということは、日本の対策チームの専門家の方が、たとえ感染症業界で使わない言葉であっても、このOver Shootという表現がいちばんぴったりくる表現だと感じて使ったのかも知れません。たとえ日本語英語と笑われようが、僕はこの2単語の並びを見ると、言わんとすることがとてもよくイメージできます。
「わかりやすいことが大事」
最近必ず言われることですが「わかりやすくする≒単純化する」です。そこで発生する齟齬は結構大きいというのが、僕ら映像を制作する人間が日々感じていることです。映像制作というのも、ものごとを単純化して捉える仕事ですから。
「オーバーシュートってなに?」と思うならば
「わからなかったら、自分で調べてみれば?」と思います。英語の辞書に用例として載っていなくても、調べていくうちに様々な業界でどのように使われているかがわかります。そうすれば、記者会見の意味もより深く理解できるに違いありません。
この件を書き始めると長くなるなるので、改めて。
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