あなたは、スタートアップ企業で社運を賭けた新サービスの販売促進計画を任されました。当然ですが前任者がいるわけではないので、そうしたプロジェクトのマニュアルも雛形もありません。アドバイスくれる先輩も同僚もいない場合、あなたが実行したことが前例として残っていきますから責任重大です。
スタートアップのような熱量が高いスタッフが集まった組織では、各論の論議が先行してしまい、肝心のターゲットや目標設定を後回しにして、薔薇色の成果を想像しがちです。
しっかりとしたエビデンスと条件設定、目標設定を行うことが重要なのは言うまでもありません。では、例えばテレビCMを核とした宣伝計画案が持ち上がったとします。
まず企画書をつくるとしましょう。
企画書には以下の要素が必要です
1. 企画概要
CMのコンセプト
CM全体を貫くテーマやメッセージを簡潔に表現する
ブランドイメージと整合性のある、魅力的で記憶に残るコンセプトにする
ターゲット層
年齢、性別、職業、ライフスタイル、価値観など、具体的なターゲット層を絞り込む
放映時期と期間
計画準備期間やCM制作期間との余裕をもったスケジュールをたてる
2. 目的
販売促進、ブランドイメージ向上など具体的な目標
例:ブランド認知度を10%向上させる、販売数を20%増加させるなど)
3. 製品/サービスの特徴
アピールしたい主要な特長や利点
4. クリエイティブ戦略
ストーリーライン
キーメッセージ
CMの具体的なストーリーを絵コンテや文章で表現する
5. 媒体計画
テレビCMの放映期間、時間帯、頻度などを決定する。
ターゲット層の視聴習慣に合わせて、最適な媒体計画を立てる
6. 技術的詳細
撮影場所等社内に関係する事情がある場合
7. スケジュール
企画立案からCM放映までのスケジュールを詳細に記載する
各工程の担当者や期日を明確にする
制作から放映までのタイムライン
8. 予算
制作費、放映費の概算
9. 期待される効果
視聴率予測
売上や認知度向上の目標値
CMの効果を測るための指標(KPI)を設定する
10. リスク分析
想定される課題と対策
11. 競合分析
他社の類似CMとの差別化ポイント
12. 法的考慮事項
関連する規制や法律への適合性
4.〜8.については外部の制作会社に予め相談して、プランをもらっておくと良いでしょう。ただし、稟議が通らない可能性がある場合には、そのことを予め伝えておきましょう。
こうした計画案が出来上がっていればプロジェクトは力強く前進していきます。
後先になってはいけないこと
現実に、こうした計画的であるべきプロジェクトで、CMの絵コンテだけが先行して決まっているような事案をしばしば目にします。いざ制作が始まってみて、販促計画の全体像に相応しくないことに気づく例です。時間的にも費用的にも大きなロスであるばかりでなく、会社の志気にも悪い影響が出ますので心したいことです。
ほかにも、よくある失敗には以下のようなものがあります
1. ターゲット層の不明確さ
対象となる顧客層を具体的に定義せず、「一般消費者向け」といった曖昧な設定にしてしまう。
2. 差別化要素の欠如
競合他社のCMと似たような内容になり、独自性や記憶に残る要素が不足している。
3. 予算の過小評価
制作費や放映費用を楽観的に見積もり、実際の費用が予算を大幅に超過してしまう。
4. メッセージの複雑さ
短時間のCMで伝えられる情報量を過大評価し、視聴者に伝わりにくい複雑なメッセージになってしまう。
5. トレンドへの過剰な依存
一時的な流行やトレンドに頼りすぎて、長期的なブランド戦略と整合性がとれていない。
6. 効果測定指標の不適切さ
CMの成功を測る具体的で適切な指標(KPI)が設定されていない。
7. 法的リスクの見落とし
著作権、肖像権、業界規制などの法的問題を十分に考慮していない。
8. スケジュールの非現実性
制作や承認プロセスに要する時間を過小評価し、実現不可能なスケジュールを組んでしまう。
9. ステークホルダーの考慮不足
社内の各部門(営業、製品開発、法務など)の意見や懸念を十分に取り入れていない。
10. データや根拠の不足
提案内容を裏付ける市場調査データや過去の事例分析が不十分。
11. ブランドガイドラインとの不整合
企業やブランドの既存のイメージやガイドラインと一致していない内容になっている。
12. フォローアップ戦略の欠如
CM放映後の効果測定や次のステップに関する計画が不明確。
まとめ
プロジェクトの初期段階から多角的な視点で検討し、社内の関連部署や外部の専門家の意見も取り入れながら、綿密に計画を立ててください。スタートアップでは全社一丸となることが、何よりも重要です。あらかじめ社内のコンセンサスを得た計画案を作り上げてから進めることが、何よりも大切です。
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