意味は同じです
どちらも映像に重ねて表示される文字や図表のことを言いますので、語源は違うけれど、意味は同じです。 テロップ 【Telop】はTelevision Opaque Projector という機材の固有名詞が短縮されて皆が使っているうちに定着した、テレビ業界での呼び名。
スーパーは正しくはスーパーインポーズ【Superimpose】のことで、「載せる」とか「重ねる」という意味があり、映画【Films】の世界で使われていた用語です。
日本語には「字幕」という呼び方もあります
日本語としてのスーパーもテロップも、英語ではタイトル【Title】、中でも出演者名や字幕はサブタイトル【Subtitle】 、オンオフできる翻訳字幕はキャプション【Caption】という用語があります。
字幕と言うと外国語映画の台詞を翻訳して映像に重ねた文字というイメージなので、日本では字幕=サブタイトルというのは違和感があるかも知れません。
テロップ入れはたいへんな作業だった
映画フィルムのスーパーインポーズもオプチカル処理という相当に面倒くさい工程が必要でしたが、テレビ(ビデオ)の世界も、30年ほど前に、映像制作技術の本格的デジタル化が始まる前までは、非常に手間のかかる作業でした。
画面に文字や図表を重ねるには、テロップカード=映像に重ねたい文字を印字(写植)した用紙(100mm×125mm)を撮影する専用のカメラと編集装置を繋ぎ、特殊な合成編集をする工程が必要だったのです。
時間と労力、努力と勘
テロップカードづくりは、粗編集、オフラインと呼ばれる仮編集作業で概ね映像のつながりが完成してからの作業です。PM(制作進行)やAD(助監督)はディレクターから原稿を受け取り、近所の写植屋さんに走ったものです。写植屋さんでテロップカードという真っ黒なマット生地の用紙に白色で文字を印刷してもらうのです。(実際には白い印画紙に、文字部分を残して黒ベタにしたものだったのかな)
テロップカード作成はよほど大手プロダクションでない限り外注でしたから、どう特急作業をお願いしても翌日以降にしか出来上がってこないので、PMやADは日頃から写植屋さんとの関係を良好に保ち、自分だけは優先的に作業してもらえるよう、あの手この手でオベッカを使ったものです。
写植屋さんはデザイナーでもあった
ところで、それらのテロップはどのカットのどの位置に重ねるかもあらかじめ想定して発注しますので、写植屋の職人さんは指定された位置に、一文字一文字に長体や平体を掛け、字間を調整、レイアウトして作成してくれたものです。
今のように、編集しながらその場でちゃちゃっとキーボードを叩き、カーソルでスーッと位置を決めてEnterを押すだけ!というわけにはいきません。昔の映像制作という仕事がいかに時間と労力、経験と勘が必要な仕事だったことがわかる、ひとつのエピソードです。
テロップをイージーに考えない
さて、ところで、今の時代、動画映像に文字を重ねるなんて造作も無い作業ですが、ちょっと無造作なケースをよく目にします。
映像というのは撮影する時点で、フレームの中で構図として完成していることが原則です。カメラマンはカメラやレンズが動いていて被写体が画面の中で変化する時も、連続的に構図を維持しようと努力しています。従って、編集時点でその映像は、どこを切り取っても構図としてほぼ完成しているわけです。
そこへテロップを重ねると、基本的にその構図を壊すことになります。もちろん、収録時点でテロップを挿入することを前提として、構図にスキをつくっておく、という撮り方も行います。
テロップは重ねる位置や大きさ、それにその文字のデザインには相当の配慮をしなければなりません。アンダースーパーなど一定位置で押し通す長尺作品は別として、一般にWEB動画と呼ぶ短尺作品の場合、基本的には都度、構図のバランスをとれる空間を見つけて、書体や大きさ、字間、デザインを調整しながらワンカットワンカット、丁寧にキメていきます。
構図の悪さをテロップのデザインで誤魔化す
少し構図が崩れたポイントを見つけて、テロップをレイアウトするのがカッコいい場合もけっこうあります。 映像の構図の中にどうテロップをレイアウトするか、デザインするかによって、映像の品位はグッとグレードアップします。少なくともワープロソフトで打ち出したそのままの文字の字間は「間が悪い」ので、一文字一文字ちゃんと字間を調整する手間を惜しんではいけません。
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