はじめに
メディアリテラシーの重要性が叫ばれて久しく、現代において正しい情報を見極める能力は必要不可欠だと考えられています。しかし、従来のメディアリテラシー教育には大きな限界があります。
メディアリテラシー教育の限界
従来のメディアリテラシー教育は、主に以下のようなアプローチを取ってきました
情報源の信頼性を確認する
複数の情報源を比較する
客観的な状況証拠を探す
仮説を立てて検証する
これらの方法は、一見して合理的に見えます。しかし、ここには大きな落とし穴があります。それは、これらの方法が結局のところ「推論」に過ぎないということです。
私たちは、メディアが伝える情報に対して、様々な角度から検証を試みます。しかし、その検証プロセス自体が、私たちの限られた知識や経験に基づいています。つまり、我々は知らないことについて、知っていることを基に推測しているに過ぎないのです。この方法では、「知らないこと」を真に「知ったこと」にはなりません。なぜなら、我々の推論は常に不完全で、バイアスに満ちているからです。
「知っている」ことこそが最強のメディアリテラシー
真のメディアリテラシーについて考えてみましょう。最も確実な情報判断の方法は何でしょうか。それは、その事柄について直接的な知識や経験を持っていることです。
例えば、ある国の文化について報道されたニュースがあったとします。その国に住んだことがある人、あるいはその文化を深く学んだ人は、そのニュースの真偽や妥当性を即座に判断できるでしょう。なぜなら、彼らは「知っている」からです。
「知っている」ことは、以下のような力を持ちます
即時の判断力:情報の真偽を瞬時に見抜くことができる
文脈の理解:背景にある複雑な要因を理解できる
誤情報への耐性:間違った情報に惑わされにくい
深い洞察:表面的な情報を超えた本質を見抜ける
つまり、「知っている」ことこそが、最強のメディアリテラシーです。
社会勉強と社会経験、職場経験の重要性
どうすれば「知っている」状態に近づけるでしょうか。答えは簡単です。もっと学び、もっと経験することです。社会勉強と社会経験、職業経験は、真のメディアリテラシーを獲得するための最も有効な方法です
多様な分野の学習
歴史、政治、経済、文化など幅広い分野を学ぶ
専門書だけでなく、一般書や新書なども活用する
実際の社会経験
様々な職業体験や internship に参加する
ボランティア活動や地域活動に積極的に関わる
多様な人々との交流
異なる背景を持つ人々と対話の機会を持つ
国際交流イベントや文化交流プログラムに参加する
メディア制作の体験
ブログやSNSでの情報発信を実践する
学校や地域のメディア制作プロジェクトに参加する
旅行や留学
国内外の様々な地域を訪れ、直接体験を積む
可能であれば長期の留学や海外勤務を経験する
さまざまな仕事、職場を経験する
いわゆる上流から下流までの職場を経験する
職場内のさまざまなポジションを経験する
それらの職業で働くことが、社会からどのように扱われるかを経験する
これらの活動を通じて、私たちは「知っている」ことの範囲を広げていくことができます。そして、この「知っている」という基盤が、真のメディアリテラシーを支えるのです。
私は「6.」が一番重要だと思っています。
真のメディアリテラシーを目指して
メディアリテラシーは、単なる情報の真偽判断スキルではありません。それは、世界を理解し、複雑な現実を把握する能力です。そして、その能力の核心にあるのは、「知っている」という確かな基盤なのです。
動画を見た、映像を見ただけで知ったことにはなりません
動画制作、映像制作を生業にする私が言うのも気が引けますが、動画を見た、映像を見た、では知ったことにはなりません。必要なのは、私たちの経験です。経験といっても、単に「そこにいた」「それを見た」という経験ではなく、そこで悩み、挑戦し、突破した経験です。そうして学び続け、経験を積み重ねていくことで、より確かな判断力と洞察力を持つことができます。そしてそれこそが、複雑化する世界を生き抜くための最強の武器となります。情報があふれる現代社会において、「知っている」ことの価値は計り知れません。
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