映像のプロトコル
複数以上の人間が関わって進める事柄についての、「約束事」とか「手順」のことを「プロトコル」と言います。転じて今ではIT用語のように思われていますが、もっと昔からある言葉です。
では「映像のプロトコル」とは、何を指しているのか。簡単に書けば「こうすれば、視聴者はこう思う(はず)」というお約束のことです。「え?映像を見た時の感じ方は、人それぞれじゃないの?どうして約束なの?」と思われるかも知れません。もちろん統計的に見て、のことなんですが、多くの人が「そういうことになっている。」という共通の思い込み(お約束)に従って、制作者は映像を作り、視聴者はそのルールに従って映像を視聴しています。
テレビ番組・TV-CMのプロトコル
「価値観・世界観」
言うまでもなく、テレビはマスメディアなので、一定地域の人たち(文化基盤が似通っている人たち)が一斉に、同時に視聴していることが前提です。老若男女が、お金持ちにも清貧にも、お利口さんにもお馬鹿さんにも、ものすごい数の人たちに、均一によく伝わるようコンテンツであることがヨシとされます。すなわち、価値観も世界観も正誤観、善悪観も平均的なところを狙って作り込まれます。
「出演者は有名人(でなければいけない)」
出演者はできるだけ有名人であることが、伝達率を上げるコツ、というか常識です。逆に無名な人が言うことなんか、視聴者は聞きません。
「音楽はヒット曲(でなければいけない)」
ドラマにせよ、ドキュメンタリーにしろ、有名でヒットしたポピュラーな音楽を使えば、その曲が持っている曲想が、そのままその映像に適用され、演出してくれ、視聴率は上がります。
「テレビで言うことは本当(でなければいけない)」
何百万人、何千万人に宛てている放送で間違ったことを言うわけがない。テレビ局に勤めている(高学歴で優秀な)人が調べたんだから本当なのだ。
動画のプロトコル
これまで番組を作る側も、視る側も上記のような先入観を持ってきました。そして今、多くの人がネットで動画を視るようになりました。
とくに熟年層よりも上の世代では、なんと言っても動画を視る媒体はテレビか映画しかなかった、その長い期間の経験から、「動画」のプロトコルもテレビ番組と同様でなければいけない、あるいは同様のものが一番いいに決まっている。そういう漠然とした先入観に嵌っています。
動画はテレビではない
どうぞ、「動画はテレビ番組のようでなくてはならない。」という思い込みは捨ててください。媒体の性質が全く違います。
WEBに掲載する動画で効果を上げるのは、ニッチで個性的な人たちに向け、ターゲットを絞って発信するコンテンツです。そこで描かれる価値観はぶっ飛んでいてもいいですし、出演者は素人さんでも構わないのです。
いっぽう、あなたがPRしたい会社や、商品、サービスが万人受けを望んでいるならば、テレビでの出稿を考えた方がいいです。WEBでのプロモーションで万人受け、大衆受けを狙うと、拡散対策のために、もしかしたらテレビ媒体への出稿に匹敵するお金が要ります。
いちばん悲しい結果になるのは、(業界では有名でも)一般には無名な企業が、テレビCM向きの企画をたて、低予算なのでテレビコンテンツのプロトコルを無視して制作して、ネットで公開する・・・です。
公開後、制作予算を再生回数で割ったら、「うん万円/1再生」なんて悲しい事になりかねません。
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