映像(カット)を記号として考える
プロのモデルさんにファインダーを向けた経験のある人ならば分かると思います。例えば素敵なカフェなんだけど、どうも垢抜けた絵にならない。ところがメイクアップも衣装もきちんとしたモデルさんをフレームに入れてみると、あら不思議。まるでパリのカフェで撮ったようなおしゃれな写真が出来上がります。
人はそこに映っているオブジェクト(記号)が持っている意味を自分の経験や価値観に照らし合わせて瞬時に解釈しています。上記であれば、見目麗しくおしゃれな女性がいるカフェ=おしゃれ、となるわけです。
映像(動画)というのは記号のオンパレードです
と言い切ってしまうのもどうかと思いますが、実際シナリオを書きながら映像の欄を埋めていく作業は、「このシーンはどんな記号(映像)が適当か」という作業に他ならないのです。
例えば「潮が満ちてきた」というシーンを描きたい時、単純に考えれば波打ち際を撮ればいいと考えるでしょう。しかし波打ち際を撮ったところで「満ちてきた」を表現するのは無理です。なによりもロケーション撮影を設定しなくてはなりません。
こういう時は連想ゲームをします
人が「潮の満ち引き」から連想するのは何だろう?と。
例えば月はどうだろう。それも煌々とした満月。映像ライブラリーから探して満月の映像を編集時にインサートして、ナレーションで「潮が満ちてきました・・・」と喋れば、直接的な海の映像よりも少し深みが出て印象深い表現になるんじゃないか。手持ちのライブラリーからならば予算も掛からない。
人は月が潮の満ち引きを起こしていることや、満月では干満の差が大きいことを知っているので、自分の経験に即してイメージを持ってもらえるだろうと考えるのです。
満月はイマジネーションを喚起する とても汎用性の高い記号
ただしこの記号、理科が不得意な子どもには意味不明でしょう。
そこがこの記号を使った映像作りの難しいところです。
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