始まりも終わりもカタチがない映像
動画・映像は視聴者のプロフィールや経験値によって、視聴したときの受け取り方が千差万別であることは避けられません。
完成した映像でさえ、こうした「あやふやな価値」であることを避けられない映像コンテンツづくりですので、少なくとも制作着手する時点では、クライアントと制作者は、「テーマ」「目的」「材料」「手法」「スケジュール」「予算」など、コンテンツを定義する外的条件認識は一致していて、相互に認証していなければなりません。
企画段階では共通認識を形成するための手続きがつづく
企画段階では、この共通認識を確立するためのプロセスが何度も繰り返されます。
企画書(コンセプト定義書)の作成・修正・承認、シナリオの提案・修正・承認、予算案の提示・修正・承認、そして発注書の発行・受領。さらに、出演者やロケ地、撮影スケジュールなど、具体的な内容についても、クライアントとの間で綿密な調整が行われます。
撮影後には修正ができない
撮影後には原則的に修正が不可能ですので、撮影前に映像に関わるすべての要素について、クライアントの承認を得ておくことが理想です。もちろん、現実的には、お互いの信頼関係に基づいて「お任せ」という形になることも多いでしょう。しかし、もし撮影現場でクライアントから「これは違う」という意見が出た場合、それは制作側の準備不足が原因であると捉えられかねません。そのような事態を避けるためにも、撮影前に映像の中に登場するすべてのモノやコトについて、事前に準備を進め、クライアントの承認を得ておくことが不可欠です。
編集後のイメージ
ディレクターにとってはシナリオの段階から脳裏に描かれていることが多いですが、クライアントにとっては撮影と編集が完了して初めて目にするものとなります。もし、ここでイメージに大きなギャップが生じてしまった場合、それはシナリオの説明が不十分であったか、そもそも最初から両者の間に共通認識がなかったかのいずれかです。後者の場合は、企画段階でクライアントに提示したビジョンが誤解されていた可能性があり、その責任はプロデューサーにあると言えるでしょう。場合によっては、プロデューサー自身が「こんなはずではなかった」と感じることもあり、これはプロデューサーのディレクター選定ミスが原因であると考えられます。
「音つけ」
映像に音楽や効果音、ナレーションなどを加える「音つけ」という工程では、クライアントの意向を事前に把握しやすいことから、大きな食い違いが生じることは比較的少ないと言えます。しかし、コミュニケーション不足によって、思わぬ誤解が生じる可能性もゼロではありません。
音楽についてのギャップ
制作者としては漠然とでも制作初期にすでに音楽が脳裏に聞こえています。そして撮影、編集と工程を進みながら、お客さんとコミュニケーションしていると、お客さんの好みがわかってきます。ここで、初期のイメージで押し切って音楽を選ぶということはしません。お客さんのイメージを外さないように、演出意図を実現する楽曲を探して、音つけしてお客さんにお聞かせします。それでも「この曲は別なのにできませんか?」と言われることがありますので、候補を2曲くらいお聞かせして選んでもらいます。
効果音についてのギャップ
画面の中を飛び交う文字やイラストが多い最近では、その動きに効果音をつけることが当然と考えている音効さん(音つけの専門家)も多いので、黙っているとピューンとかピコピコとか鳴り詰めのサウンドができあがってきます。こういうタイプの効果音は、コンテンツの性格を「軽快」にしますが、企業VPでは「軽め」が良い場合は少ないので注意が必要です。お客さんが若い担当者の方でしたら、問題有りません。むしろテレビ番組みたいと、お喜びになります。が、中高年以上の上司はあまり良い顔をしません。
ナレーターのギャップ
ナレーション録音をする前には、必ずナレーター候補者のボイスサンプルをお聞きいただきます。まず男性が良いか、女性が良いかと伺い性別を決め、だいたい3名くらいの候補を上げさせていただきます。この時には当然、ディレクターイチオシの候補を入れるのですが、最近のお客さんはかなりの確率でイチオシ候補を選ばず、アニメキャラのような声を選ばれます。お客さんが選ばれるのは、テレビ番組での「声の出演者」でよくある声と喋り方の人。制作側が推すのは「声が視聴者の心に届く喋り」です。
このナレーターの人選についてのギャップは露見しないものの、実は最近はよく起こっています。
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