映像制作業務は案件内容を規定する書類をつくることが難しいため、これまで口約束で仕事が始まることが大半でしたが、近年ようやく契約書を交わすことが多くなってきました。
ところが、広告代理店との取引で多いのですが、実際には書類はカタチだけで、請け負う作業内容は発注後に詰めていく・・・というパターンが今も多いのが実情です。これには映像ソフトというプロダクツならではの特性があるからです。
インターネットを通じて、取引実績がない、面識がない業者に制作を発注される場合は、制作内容や金額についてすれ違いが生じないために、できるだけ客観的な形でエビデンスを残したいものです。
映像制作契約の2つのパターン
映像制作の契約には、大きく分けて以下の2つのパターンがあります。
詳細な契約書
業務内容、納期、対価などを詳細に記載した、一般的な契約書です。
発注書
納品物、金額、納期のみを簡潔に記載した、覚書程度の書類です。
何度目かの取引で相互の信頼関係がある場合は「発注書」でも問題ありませんが、一般企業の方が初めて映像制作会社と取引する場合には、詳細な契約書を締結することが推奨されます。そのためにはまず、予算を算定する仕様書と見積書が必要です。
映像制作の「仕様書」とは?
工業製品のような具体的な製品と異なり、映像作品には明確な「仕様」を定義することが難しい点が特徴です。では、映像制作の「仕様」とは何なのでしょうか?
シナリオが果たす「仕様書」の役割
映像制作の「仕様」に相当するのが、シナリオです。シナリオは、映像の内容、ナレーション、音楽、効果音などを文字で記述したもので、映像作品のイメージを共有するための重要な書類です。
シナリオは、以下の情報を提供します。
何を撮るのか: 撮影箇所、撮影日数や機材規模、スタッフ数が読み取れます。
どう撮るのか: 追加の機材やスタッフ、日数が必要か読み取れます。
イラスト、CG: 製作規模が読み取れます。
ナレーション・音楽: ナレーターの人数、ランクや楽曲数などが読み取れます。
他
こうして、このシナリオを「仕様書」として、撮影に要する日数やイラスト点数、経費などから見積書を作成します。
シナリオの作成における課題と見積書の問題
シナリオの解釈は主観的な要素が強く、人によって理解が異なる場合があります。そのため、シナリオからイメージする映像が、必ずしも発注者の期待に完全に一致するとは限りません。
また、シナリオから具体的な制作スケジュールや費用を算出するためには、経験に基づいた判断が必要となります。そのため、異なる制作会社が同じシナリオに対して異なる見積もりを出すことも珍しくありません。
シナリオ作成の費用と契約のジレンマ
シナリオの作成には時間と労力がかかります。しかし、まだ契約が成立していない段階で、シナリオ作成費用を負担することは発注者にとっては大きなリスクとなります。
一方で、制作者側にとってもシナリオを作成せずに制作を開始することは、納期遅延や品質低下につながる可能性があります。この「シナリオがないと見積もりができない」「見積もりがないと発注できない」という状況は、映像制作業界における永遠のジレンマです。発注側と受注側の信頼によって乗り越える、映像制作第一の関所と言えます。
広告業界の実情
広告代理店との取引では納期が短いことが多く、シナリオ作成に十分な時間を割くことが難しいのが現状です。そのため実際には、長年の取引での信頼のもと契約書は形だけというケースが少なくありません。
まとめ
映像制作の発注では、契約からシナリオ作成までの間に様々な事情が絡み合っています。発注者と制作者が円滑なコミュニケーションによって信頼関係を構築して、それぞれの期待を共有することが、成功の鍵となります。
弊社では担当のプロデューサーが丁寧にご案内します。
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