テレビCMに映る「商品」の多くがCG
自動車のCMを見ると、そのCMの中を走るクルマのほとんどがCGです。新車のCMはその実車が世に無いうちに制作しなくてはならない、とか発表前でひと目に晒せない、という理由の場合もありますが、多くの場合は、制作者がCGの方が思い通りのクルマを表現できる(と考えている)からです。たしかに質感といい反射といい、すごくリアルで美しいですが、野外の公道であんなに綺麗に撮れるというのも不自然なので、どこかツクリモノっぽさは否めない、と僕は思っていますが・・・。
商品パッケージの撮影
商品の見た目は、その商品の印象を決める大きな要素なので、クライアントも画面に映る商品外観の質感には非常に気を使います。特に化粧品などの美容モノは非常に拘ります。我々映像制作者もそのことはよく知っていますので、CMの撮影であれば相応のスタッフと機材を揃え、事前のテストも行います。化粧品メーカーの広告担当の方は、数多くの現場を見てきていますから、そこに手を抜く制作会社ははじめから相手にしません。そこで実際には、撮影現場のモニターで商品の映りを完璧に確認することは難しいため、事前、事後どちらもチェックや修正のし易いCGで制作しています。こうしたCG技術は非常に高度なものですが、スタジオ撮影で失敗するよりはコスパが良いということもあります。
背景の中に置く商品撮影
例えば高級腕時計とか美術工芸品のPRのための映像制作をする時に、やはりその質感表現は非常に重要です。背景空間のイメージも加えて、より品質を感じさせる映像に仕上げるのが常套手段です。この場合、商品と背景両方の質感、空間印象を創作しながら撮るわけですから、なおさら難しい技術です。また、撮影場所の探索、選定、使用交渉。インテリアコーディネイト、照明設置など、非常に多くの解決課題も立ちはだかります。
なぜCGが使われるのか
1. 自由度の高さ
理想的な表現: CGであれば、現実世界では実現不可能な素材や光の効果、そして動きを表現することができます。例えば、自動車CMで、雨に濡れたボディの輝きや、夜空を背景にした走行シーンなど、CGならではの表現が可能です。
時間とコストの削減: 実物を使った撮影では、天候や時間帯、場所などに左右され、撮影スケジュールが遅延するリスクがあります。CGであれば、仮想空間で自由に撮影を行うことができるため、時間とコストを削減することができます。
修正の容易さ: 撮影後、イメージと異なる部分があった場合、CGであれば簡単に修正することができます(←これは言い過ぎだろ!)。
2. 高い品質
細やかな質感表現: CGは、実物では表現が難しい、金属の光沢や、布の質感などを、非常に細かく再現することができます。
完璧な構図: カメラアングルや照明、背景など、あらゆる要素を自由に調整し、完璧な構図を構築することができます。
3. 安全性
危険なシーンの再現: 爆発や衝突など、危険を伴うシーンも、CGであれば安全に撮影することができます。
貴重な製品の保護: 高価な製品や、まだ世に出回っていない製品を傷つけることなく、安全に撮影することができます。
WEB動画にテレビCMと同じレベルの映像品位?
いわゆる「カタログ写真」は、キレイに撮れていますが、一般的にベタ明かりです。こうした撮影を物撮りと言います。シチュエーションに商品を置き、印象的な陰影の中で撮る映像とはベツモノです。そこに更にモデルやタレントが入れば、もっと難しくなります。写真は静止画ですから、一方向からだけ完璧にすれば良いですが、ムービーはカメラが向く範囲全てに気を使わなくてはなりません。テレビCM並みの映像品位をWEB動画予算でつくるのは無理なことです(ローカルCMやテレビショッピングのレベルは別です)。
高級商品広告映像の撮影は、カタログ用の商品撮影とは、次元が異なる仕事です。
Comments