動画・映像制作において、照明の役割は近年、大きく変化しつつあります。
10年ほど前から、撮影現場に照明スタッフや機材を入れず、自然光のみで撮影することをあたり前と考えるカメラマンが増えてきました。これは、カメラの性能が向上し、暗い場所でも比較的鮮明な映像が撮影できるようになったことが大きな要因ですが、それだけではありません。
ありのままで
特にデジタル一眼レフカメラの普及に伴い、「ありのまま」の自然な映像を好む傾向が強まり、作為的に照明を当てて撮影することはカッコよくないと捉えられるケースも少なくありません。
また、一部の動画制作者は、動画制作とは「事実を撮影すること」だと考えています。ドキュメンタリーに限らず、広告やPR映像であっても、過度に演出された映像は不自然で説得力がないと感じる人が増えています。特に若い世代では、SNSで手軽に撮影された素人っぽい映像の方が、よりリアルで信頼できると感じる傾向があるようです。
限定される企画
しかし、この「ありのまま」の撮影には、表現の幅を狭めるという側面もあります。
確かに自然光のみの撮影は、よりリアルな映像を生み出すことができます。しかし、そうした映像は、そうした映像が似合う企画において有効な方法です。
広告やPR映像においては、商品の魅力を最大限に引き出すためにフィクションな世界観を描くことも多く、照明を用いた演出が不可欠な場合もあります。例えば、ストーリーのあるシーンの中で商品の素材感を強調したり、特定の部分に視線を誘導したりといった効果は、照明なしでは実現が難しいでしょう。
技が隠れている照明技術
SNSマーケティングにおいても、一見素人のように見える写真や動画の中に、実は巧妙なプロの演出が隠されていることがあります。同様に映像制作においても、視聴者に意識させることなく、自然に被写体を美しく見せる照明技術が求められます。照明は、単に被写体を明るくするだけでなく、映像全体の雰囲気や印象を大きく左右する重要な要素です。
照明は大切です
照明を巧みに利用することで、より魅力的で印象的な映像を作り出すことができ、企画の幅が格段に広がります。広告・PR映像において、照明を入れずに撮影することは、表現の幅を狭め、企画の多様性を損なう可能性があることを忘れてはいけません。
特にビジネス映像制作の世界では、照明の役割を再認識し、より幅の広い映像表現を手に入れたいものです。
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