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Tomizo Jinno

映像で伝えられることはひとつ

会社案内映像を3分尺で作って欲しい


最近そういうオーダーが増えています。会社案内、つまり企業が自社の企業情報や商品・サービス情報を社会に拡散するためのものです。でも会社という事業体を説明するための情報は多岐に渡ります。だからそれを3分に詰め込むと、情報密度が過剰になり、視聴者にはむしろ何も残らないということが起こります。。



短時間に、多く、深く知って欲しい


よく理解できます。けれども、会社案内を制作発注されるご担当者の方は、ぜひよく考えて欲しいことです。

3分の映像で伝えられることはじつは「ほんのひとつ」です。

5分でも「ひとつ」。

10分だと「ひとつのことを深く」伝えることができます。

 

NHKのニュースショーのような番組があるとします。

よくある構成に「特集」という、テーマを絞ったコーナーがあります。

こうした「特集」を視聴した後、頭には何が残っているでしょうか?

特集コーナーの内容は、現場取材あり、インタビューあり、専門家のコメントあり、解説あり。しかし、それらの情報はすべて、ニュースショー制作者が掲げた「ひとつのテーマ」に収斂されるよう構成されています。

 


真摯な視聴者は送り手の意図を汲み取ろうとする


番組の映像は作為的につくってあったり、現実を切り取ったシンプルなものであったり。

しかし、いずれにせよ意図に沿って繋がれた画像と音声の連続を、放送というリアルタイムな時間の流れの中に身を置き、視聴者は制作者の意図を汲み取りながら視聴します。

少なくとも意図的に視聴を始めた人ならば、何かを汲み取ろうと視聴をし、その期待を裏切らない流れであれば、テーマをはっきり理解するまで視聴することでしょう。

 


映像を思い出せますか?


でも思い出してみてください。

あなたは、その特集コーナーで視聴した情報の仔細を覚えているでしょうか?

何がどのような順で画面に現れたか、記憶をたどって書き出すことができるでしょうか?

 

思い出せるのは、例えば「地球は温暖化していて、気候変動によって人間社会は影響を受ける」みたいな、特集コーナーがあなたに伝えたかったメッセージだけではありませんか?

もちろん、脳裏には様々なシーンが断片的には残っていますが、それがどういう意味で、どういう扱いで切り取られていたかはほとんど忘れています。

 


映像の本質


映像とはそういうものです。

いや、だからこそ人に強い印象、狙ったメッセージを届けられる。

それこそが映像というメディアコンテンツの本質的な価値。

僕はそう考えています。

 


仔細な情報は覚えていない


逆に言えば、3分でも5分でも10分でも、そこに箇条書きのように情報を詰め込んだとしても、視聴者の誰もそれらのことは記憶しないということです。

何故でしょうか?

映像(+音声)は、時間と一緒に消えていき、紙面のように横目で「見直す」ことをしないうちに次に移ってしまいます。しかも次には次の情報が溢れるように押し寄せてきて、そこまでの情報を復習している隙間を脳に与えません。

むしろ、そこまでの記憶を新しい情報がどんどん塗り替えていきます。

 


記憶を塗り替えながら流れ込んでくる映像


この「どんどん塗り替えていく」ことを計算に入れて、何をどういう順番で送り込んでいくと、人の脳裏に最後に何が残るか?と考えながら映像(番組)を構成するが映像制作者の仕事です。

 


メッセージを伝えることこそ映像の役割


誤解を恐れずに書けば、映像は情報伝達には適しません。

得意なことは「メッセージの伝達」です。

映像のこのチカラを利用することこそが、僕ら映像制作者の仕事です。

映像が伝えることができることと尺について

 

 


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