オーディオミキサーという仕事
僕らが若者だった時代のオーディオミキサー(様々な音源ソースのボリュームバランスを調整する仕事)は、作業中はVUメータ(音圧を針が示すメータ)を睨みながら、2つ以上のボリュームフェーダーに、それぞれ指を乗せ、随時フェーダーを上下させながら全体のバランスをとっていました。
ターンテーブル(アナログレコード)も音源だった
例えば当時の音楽音源はアナログレコードですから、ターンテーブルのレコード盤に針を落とし、針を乗せたまま音の始まりのポイントから1/3くらいテーブルを戻しスタンバイさせ、ディレクターのcueでスタートボタンを押してスタートさせると、フェーダーの目盛りを0からスッと上げて必要なレベルに上げ、ディスクジョッキーのパーソナリティが喋り始める気配で音楽のレベルを少し下げ、喋り終わるとレベルはフルに。
そして、CMに入る前、6、7秒前からフェイドアウトを始めて、CMが入るきっかり1秒前にフェイドアウトを終える・・・みたいなことをやっていました。
時代は変わって今
映像制作の最終工程・MAスタジオに入ると、調整卓の椅子に座っているのは、おおかたが2回りくらい歳下の若者です。
彼らの指先が乗っているフェーダーはナレータのマイクのもの1個で、他のフェーダはほとんど固定。音楽のレベルは一度決めるとほとんど触りません。頭からお尻まで同じ音量というのがほとんどです。
また、最近では音声のレベルが高めのコンテンツが、試聴機会を優位に獲得しているという調査もあって、1本のコンテンツの頭からお尻まで、一辺倒に音量が一定的に大きい、という作り方がアタリマエにもになっているようです。そういう音声制作を簡単にできるプラグインエフェクトもあるようです。
音量調整も「演出」
でも、音声トラックのナレーション、セリフ、生音、音楽、効果音といった要素は、それぞれに役割があり、その音量の強弱も大切な表現要素です。どこを聞いても一定の音量では、情感表現が弱くなるし、声と音楽のバランスは、微妙な感情の揺れ動きを表すものです。
音声技術は大事にしたい
なんでもかんでも「昔はよかった」とか「アナログ時代が懐かしい」などと、無意味な懐古主義を主張するつもりは、さらさらありませんが、映像において音声が果たせる役割の多くの部分が失われている状態は残念でなりません。
NHKの番組を礼賛するわけではありませんが、NHKを視ていると、まだまだ音声にとても気を使って制作している番組がたくさんあるので、若い方は是非参考にして、勉強して欲しいと思います。
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