リーダーはプロデューサー
もちろん映像制作チームのリーダーとは、通常プロデューサーです。ただし、プロデューサーが“駆け出し”(プロダクションマネージャークラス)の場合、ディレクターの方が先輩格であるとかチカラがある場合は、実質的なリーダーがディレクターであることも時にはあります。
B2Bにおける映像制作のリーダーとは、映像作品の製作工程・予算の管理、作品品質の確保に責任を持つ役割を担う人なので、作品品質を中心に考えているディレクターがチームを仕切り、予算、工程管理の責任だけプロデューサーが受け持つことは、あまり上手いシキリとは言えません。
プロデューサー今昔
ところで映像制作に関するリーダー論については、昔の日本は今とはちょっと違っていました。僕がこの業界に入った30年ほど前は、まだ映像制作に関する方法論や習慣がフィルム映画(俗にいうホンペン)のそれに倣っていた時代。
当時の僕から見れば親父のようなディレクターやカメラマンが、異口同音に「映画づくりは様々な能力や個性を持ったスタッフの頭脳が集まることで “思いもよらない作品に仕上がるところが素晴らしい”」と言われていたのです。
当時まだ20代の若造の僕ですが「なんかおかしくネ?」と思ったものです。僕らはお客さんからお金を頂戴して、お客さんの為に映像をつくっているのに、「なにができあがるかわからない」っていう言い方は、いくらなんでも無いだろう!?
制作が偉くて営業はダサい
当時の映像制作の組織は、実質的な制作については企画を含めてディレクター(というより監督)が権限を持っており、営業(名刺にはプロデューサーと書いてあったりする)が、お客さんとの「連絡役」「調整役」を担っていました。
つまり、予算管理責任だけ負ったプロデューサーが、監督の言われるがままにパシリをやっているという、あまり上手くないシキリがあたりまえに行われていたのです。
昔はホンペン映画だけでなく、テレビやラジオの制作現場でも、制作が偉く、営業はパシリ。という認識が横行していました。
お客様への裏切り行為
しかし、B2Bの映像制作でお客様は「ひとつの組織」に対して仕事を発注しているわけなので、常識的に考えて、企画の管理、予算・工程の管理は一元的に行われていると考えますし、ましてや企画(作品)の行く末が、たまたま集まったスタッフの個性によって決まる、なんて想像もしていないでしょう。
優れたプロダクツを産み出す組織とは
複数の頭で考えている企画(作品)が、純度の高い、ピンポイントを狙える映像に仕上がるでしょうか?
モノを作る組織でも同じですが、ひとつのプロダクツを創造するプロジェクトは、企画を理解し、製造方法を熟知し、組織の運営にも長けた、ただひとりのリーダーによって指揮された時、人の心を引き付ける魅力的なプロダクツが生まれるものです。
合議制や、ひとの意見を集約したようなプロダクツは、経済成長時代の最大公約数を狙ったビジネスには有効ですが、今の時代は違います。数は多くなくても狙ったターゲットに深く食い込むメッセージこそが、ビジネスに貢献する時代です。
企画を狙い通りにカタチにするのがプロデューサー
企画意図や作品品質は、予め提案した内容どおりにカタチにして初めて価値を産むことは今や常識です。予算や工程管理を含めて、それらをトータルで責任を持つのがプロデューサーであることも、今では異論は無いでしょう。
では、昔はどうしてプロデューサーがリーダー足り得なかったのでしょう?
それはたぶん、フィルムの時代はたしかに技術的に専門性が高く、映像に関する理論もまだ数少ない専門家しか習得していない時代だったからではないでしょうか。
映像プロフェッショナル
しかし、今の時代では営業的なセンス(コミュニケーション力)が有りながら、映像技術、理論についても満遍なく理解していて、アイデアやセンスに関しても卓越していて、提案、制作する映像に関する明確なイメージを持っていることが、この世界でプロデューサーとして生き続けていく条件になっています。
プロデューサーたる者、企画立案、シナリオ、撮影、編集、CG、録音等に関してもスタッフ同等、いえスタッフ以上の知識を持っていることが、多くのスタッフを抱える制作チームのリーダー足りえる条件だと思います。
自分もB2B映像制作のプロデューサーとして永く現役であり続けるために、日々勉強を続けています。
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