私がラジオ番組ディレクターをしていた若い頃、自分に映像制作ができるなんて思っていませんでした。編集なんて、なにかすごく難しい理論があって、ものすごく勉強して経験を積まないとできない仕事だと想像していました。
今思い出すと、なぜそんなに難しく考えていたんだろうと不思議なくらいでが、当時は誰もが、映像をつくるには特別な技術が必要だと思っていました。
ところが今では世界中の人が「自分だって映像なんかつくれる」と思っています。
あながち間違っているとは言えません。
ただし、深く関わってみないとわからないこともたくさんあります。
私がビジネス映像制作という仕事をしていて、この分野について世間が誤解していることをいくつか書き出してみます。
①動画は情報量が多い
と言いますが、それはデータのビット量が多いだけです。
このことが必ずしも有利でもありません。ポスターやラジオCMでも同等の情報を盛り込めます。情報量は増やすほど核心が見えにくくなります。映像制作者は通常15-30秒に1つのメッセージしか込めません。映像の優位性は、視聴者に納得をもたらすシーン構成やストーリーにあります。単なる情報の羅列では視聴者は納得できません。
②動画は短い方がいい
ことばかりではありません。
B2C向けの動画は短い方がいいです。しかしB2B向けのPR動画は、興味を持った視聴者に十分な情報を提供し、確実にファンを作ることが重要です。長さより内容の質が重要で、5分や10分かかっても構いません。ただし、ネット上でB2B動画の効果を高めるには、SEO対策やマーケティング戦略が必須です。また、薄利多売の商材には向きません。有料広告との連動が必要になり予算が高額にるからです。
③動画づくり=編集
ではありません。
編集は映像制作の一部に過ぎません。良い映像素材、企画、シナリオが重要です。映像クリエーターになるには、編集技術だけでなく、撮影や作画、音声編集のスキルも必要です。また、どれだけ高度な編集技術があっても、映像化できないことは沢山あります。
④映像=マスメディアコンテンツ
ではありません。
映像コンテンツはテレビ放送だけではありません。パソコンやWebのSNSで視聴する動画は個人向けのコミュニケーションツールであり、マスメディアコンテンツではありません。興味のある視聴者を対象に制作するものです。
視聴者の流入ルートは主に以下の4通り
(1)たまたま目に入ったサムネイルやタイトルが気になってクリックした。
(2)意図的に開いたページにあった動画を視聴した。
(3)検索してみつけた動画を視聴した。
(4)自分の意思でパソコンに保存して視聴した。
視聴者は流入ルートによって異なる動機を持っているわけですから、それぞれの視聴動機に応え、それぞれ異なるコンテンツを考えるべきです。マスメディアとは異なる、ターゲットに合わせた具体的な表現が効果的です。

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