マイナンバーカード問題で「知見」は生かされたのか
以前情報システム企業のスタッフのお話を多く聞く機会があり、その中で最も多く登場した単語のひとつが、相手先企業の業務に関する「知見」であり、その知見を得るためには円滑なコミュニケーションと、すでに知見を持つ人からの支援がプロジェクト成功の鍵であるということでした。
今報道されているマイナンバーカードに紐づける公金受け取り銀行口座の登録で、子供の口座や他人の口座が紐付けできてしまうことが問題になっています。戸籍の情報に「読み仮名」が無いことと、銀行口座の名義管理がカタカナでされていることに起因するそうです。
さて、この問題、こうしたことが起こることを誰も予見しなかったのでしょうか?
否。情報システム屋さんなら予見していたでしょう、できないわけはありません、プロですから「知見」を集めているはずです。問題はその問題が発注者(国?)にどう伝えられ、どのような対策を講じるべきか進言していたかどうかです。
BtoBビジネスの基本
請負側の企業の担当者が、取引先企業の業務の流れや目的、数量的な情報を把握することは、BtoBビジネスおいて基本中の基本です。
ソリューションやサービス、商品などを納品するためには、業務ノウハウや経緯、歴史を含め、クライアント(発注元企業)と同等、あるいはそれ以上の知識が無ければ、クライアントを満足させる成果物を生み出すことはできないでしょう。
映像(動画)コンテンツ制作に必要な知見
私たち映像プロダクションがクライアントからビジネス目的の映像コンテンツの企画制作を請け負う場合も、同様にあるいはクライアント以上に、映像化するビジネスの本質的な性質を見抜いていなければ、クライアントが満足する映像コンテンツは制作できません。そのことは、その映像コンテンツがクライアント企業から発信される情報になることを考えれば、その映像内容はクライアントの情報レベル以上でなければならばならず、至極当然のことと言えます。
クライアントの与件と映像プロダクションの知見
様々な映像制作案件も、最初はクライアントからの「与件」で始まります。テーマや目的、盛り込みたい内容、映像化したい商品や業務に関する情報、納期や予算などです。我々プロダクションはそれらの与件に沿って請け負うかどうかを決め、次のプロセスへ向かいます。
同時に映像制作業務に精通したプロとして、制作進行上で起こり得る障害や成果物への影響をできるだけ早い段階でクライアントに説明し、その対策を講じるアドバイスや提案、時には仕様の変更手続きを行うことが、非常に大きな役割だと考えています。
映像制作業では、これを行わず実際に将来障害が発生すれば、仕様書(シナリオ、見積書)に無いにも関わらず、叱責や瑕疵担保を求められることもしばしばです。このこと自体は下請けいじめとも言え、決して正しいこととは思いませんが、そういう経験を経て、我々BtoB映像制作プロデューサーは予め多くの知見をクライアントに伝えるようになりました。
映像のプロとしての矜持でもあります。
「プロデューサー」の重要性
冒頭の問題。情報システム会社がこの問題を大きなことではなく、他のシステム同様にリリースしてから改善していけばいいと思ったのかも知れません。とすれば、そのプロジェクトのリーダーは今回の問題の露見に責任を問われるべきではないでしょうか。国が社会から批判される・・・つまりはクライアントが取引先から叱責を受けていると同じことですから。要件定義書に書かれていないことは責任を持たない? 映像制作業でそのような言い訳を言ったら「プロじゃないね」と言われます。
Comments