動画・映像コンテンツの日本語ナレーションを外国語(ここでは英語)に翻訳する際の画像の同期の問題について、対処方法を列挙します。
1. 前もっての分析と調整
・翻訳前に、映像とナレーションの関係を詳細に分析します
・各カットで表示される視覚要素のタイミングをリスト化します
・日本語ナレーションの重要なポイントと映像の同期ポイントを特定します
2. 基本的な対処方法
a) 映像の順序を変更できる場合:
・英語の自然な語順に合わせてカットの順序を組み替えます
例:「道路を赤い車が走っています」→ "A red car is running on the road"
日本語版:[道路のカット] → [赤い車のカット] → [走るシーン]
英語版:[赤い車のカット] → [道路のカット] → [走るシーン]
b) 映像の順序を変更できない場合:
・英訳文を映像に合わせて再構成します
・受動態や分詞構文を活用して語順を調整します
例:「道路を赤い車が走っています」→ "On the road, running swiftly, is a red car"
3. 具体的なテクニック
a) 前置き表現の活用:
日本語:「東京で、2023年に、新しいビルが建設されました」
[東京] → [2023年] → [ビル] → [建設シーン]
英語:
方法1: "Completed in 2023, in Tokyo, this new building..." (前置き表現)
方法2: "Here in Tokyo, 2023 saw the construction of..." (場所を前に出す)
b) 分詞構文や関係詞の使用:
日本語:「富士山の頂上で、雪が降る中、登山者たちが休憩しています」
[富士山] → [雪] → [登山者] → [休憩シーン]
英語:
"At the summit of Mt. Fuji, climbers, braving the falling snow, take their rest"
c) 情報の再グループ化:
日本語:「この製品は、品質が高く、コストが安く、使いやすいです」
[品質] → [コスト] → [使用感]
英語:
"Combining high quality and ease of use, this cost-effective product..."
4. 特殊なケース
a) 製品説明動画の場合:
・製品の特徴を説明する順序を変更
・視覚的な要素をグループ化して、関連する特徴をまとめて説明
b) 手順説明動画の場合:
・ステップごとに区切って、各セクションで完結した説明を作成
・必要に応じて、字幕やテキストオーバーレイを追加
5. 補足的な対策
・テロップやスーパーインポーズを効果的に活用
・重要な情報は視覚的にも強調
・必要に応じてトランジション(場面転換)を追加
・ナレーションのスピードを微調整
6. 企画段階での対策
理想的には、多言語展開を前提とした企画設計を行うことです:
・言語に依存しない視覚的なストーリー構成
・各言語版で調整可能な余白の確保
・モジュラー(部品化)された構成の採用
制作コストを考慮して総合的な方法をとる
これらの対処法を組み合わせることで、より自然で効果的な英語版を作成することができます。制作コストとの両立も課題になりますので、重要なのは単なる言葉の置き換えではなく、視聴者の理解しやすさを優先してさまざまな方法を組み合わせることです。
一般的には日本語版がナレーションを含めて完成した後に、英語ナレーションをアフレコしますが、近年多いインフォグラフィック手法の動画の場合は、翻訳文やナレーションを工夫するよりも、自然な翻訳を優先した上で英語ナレーションを先に録音します。そのあとで映像を声に合わせて全面的に手を入れることを考えた方が、むしろ効率的で品質的にも有利になると思います。
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