動画・映像コンテンツ制作の発注先を選ぶのは難しいことと思います。実績を見るのがより確実であることは間違いありませんが、その実績がどういう条件で制作されたか、その経緯まではわかりませんし、知ったとしても、それが映像づくりにどのように影響するのか判断がつかないことも多いでしょう。この記事では、動画・映像制作会社の中でもBtoB動画・映像制作会社の「得意分野」「制作実績」というものを、どう見ればいいのか、そのヒントを書いてみました。
目次
第1章 BtoB映像制作会社の探し方
第2章 映像制作会社の傾向分析
第3章 映像制作会社の見分け方
第4章 結論:BtoB映像のプロフェッショナルを選ぶ
おまけ「ほんとうのこと」
第1章 BtoB映像制作会社の探し方
1.1 一般的な探し方の常識
①業界団体(⚪︎⚪︎製作者連盟、日本⚪︎⚪︎制作協会など)の会員リストから探す
理由:一定の品質基準を満たした信頼できる会社が所属している可能性が高い
②過去に自社で取引実績のあるプロダクションの実績を確認
理由:社内での評価や取引面での信頼性が既に確認済み
③同業他社や取引先からの紹介
理由:実績と信頼性が第三者により証明されている
④ネットサーフィンして探す
理由:ベストチョイスの制作会社が見つかるかもしれない
1.2 実情と課題
①放送局や広告代理店などとの取引が主のため、企業情報の公開に積極的な会社が少なく、情報が少ない。同様の理由で、一見からの問い合わせに対応してくれるか?敷居と予算が高い感じがする
②コンプライアンスの危惧から、過去の取引会社への継続的な発注を避けたい心理がある。
③「紹介」をすると何かあった時に責任を感じるから、紹介したくないという心理がある。
④サイトの作りと映像制作のセンスが一致しているかどうかわからない、制作実績が見られないことも多い。
1.3 具体的な対策
①映像関連業界団体に所属している制作会社の中で、一般企業等から依頼を積極的に受けたいという意向が、その会社の公式ホームページから伝わってくる会社を選ぶ。ネット上の外部の評価は、必ずしも信頼できないので除外します。敷居と予算が高いかも?という懸念については、そうした傾向は否めません。勇気を振り絞ってとにかく一度電話してみて、構想や予算をざっくり話してみて、相手の「食いつき」をみて判断するのがいいと思います。
②取引実績がある制作会社でも時間が経過していたり、営業担当が替われば対応が大きく変わる可能性があることに留意してください。
③映像コンテンツの成否を「第三者による証明」を信頼して判断ですべきかどうかはケースバイケースです。
④直感に頼る。ないしは数社を選択してコンタクトをとり、レスポンスをみて判断するのがいいでしょう。
第2章 映像制作会社の傾向分析
動画・映像制作会社は、功をなし名をあげた中心的なクリエーターにより設立されることが多く、その創立者クリエーターの得意分野の映像により経営基盤を築いたのち、徐々に守備範囲を広げていくのが定石です。では、それぞれの映像ジャンルで誕生した動画・映像制作会社が、その後どのような分野に範囲を広げることが多いのか、傾向をみてみましょう。
2.1 テレビ番組制作専門として設立
特徴:
放送局との強いパイプ
短納期での制作に強い
企画力・演出力が高い
機動的な撮影体制
その後の展開:
Web動画コンテンツ制作への展開
インフォマーシャル制作
企業PR映像制作 → 速報性、臨場感のある映像制作が得意
2.2 CM制作専門として設立
特徴:
高度な技術力(撮影・編集)
クリエイティブ重視の制作体制
広告代理店とのつながり
高予算案件の経験が豊富
その後の展開:
ブランド映像
SNS向けショート動画
プロモーション映像全般 → 商品の魅力を引き出す映像表現が得意
2.3 映画制作専門として設立
特徴:
高度な映像表現力
長編ストーリー構成力
大規模撮影のノウハウ
照明・音響技術が充実
その後の展開:
高品質なPR映像
ドキュメンタリー
ミュージックビデオ → 芸術性の高い映像制作が得意
2.4 科学映画専門として設立
特徴:
専門知識の理解力
精密な撮影技術
解説・図解制作力
研究機関とのネットワーク
その後の展開:
教育コンテンツ
医療・製薬関連映像
技術解説映像 → 複雑な内容の可視化が得意
2.5 ビジネス映像専門として設立
特徴:
企業文化への理解
コスト意識が高い
効率的な制作進行
企業ニーズの把握力
その後の展開:
採用映像
社内教育動画
IR関連映像 → 目的に応じた効果的な構成が得意
2.6 イベント映像専門として設立
特徴:
ライブ撮影の技術
マルチカメラ対応力
即時編集能力
会場設営の知識
その後の展開:
オンラインイベント配信
スポーツ中継
ライブコマース → リアルタイム性のある映像制作が得意
2.7 アニメーション専門として設立
特徴:
グラフィック制作力
モーショングラフィックス
キャラクター制作
3DCG技術
その後の展開:
広告映像
ゲームムービー
建築パース動画 → ビジュアル表現の幅が広い
2.8 IT企業からの映像制作分野への参入
特徴:
デジタル技術を活用した制作フロー
データ分析に基づいた企画立案
クラウドベースの制作環境
アジャイル的な制作進行
最新のデジタル技術の活用
展開している分野:
オンラインコンテンツ
Web動画
ストリーミングサービス
インタラクティブコンテンツ
マーケティング領域
デジタル広告
SNSショート動画
パーソナライズド動画
エンタープライズソリューション
社内教育動画
バーチャルイベント
商品プロモーション
第3章 映像制作会社の見分け方
3.1 「強み」の二面性
その制作会社がどの分野の映像制作に強いかは、第2章のようにその会社のルーツを探ればいいのですが、この「強い」は、良い意味にも悪い意味にもなることがあります。
良い意味:その分野が得意
悪い意味:その分野しかできない
これを見分けられないと、「これが得意」という制作会社への依頼は失敗するかも知れません。では、どんな視点で動画・映像制作会社を見分けたら良いのでしょうか。それは・・・
3.2 BtoBとBtoCの違い
さまざまな映像ジャンルがありますが、さらにそれぞれのジャンルにBtoC仕事とBtoB仕事があります。
3.3 BtoCの特徴
お金を支払うクライアント(企業、テレビ局、映画会社など)の意向を反映します。
視聴対象者は消費者や不特定の人々、一般大衆の気持ちを掴めるかどうかを考えます。
3.4 BtoBの特徴
お金を支払うクライアント(企業、団体、組織など)の意向を強く反映します。
クライアントが指定したターゲットの気持ちを掴めるかどうかを考えます。ターゲットが企業や組織であることも多いです。
視聴対象者は特定のビジネスパーソンや組織内の人々であり、その専門性や業界特有の文化を理解した上での映像制作が求められます。 業界用語や専門的な概念を適切に表現できる能力が必要です。
第4章 結論:BtoB映像のプロフェッショナルを選ぶ
企業のビジネス映像制作においては、BtoBの映像制作に特化した実績を持つ制作会社に依頼することをお勧めします。その理由として
4.1 ビジネスの文脈理解
企業文化や業界特有の慣習を理解している
専門用語や業界特有の表現を適切に扱える
クライアントの業務プロセスやコンプライアンスへの理解が深い
4.2 効率的なコミュニケーション
ビジネス目的に応じた企画提案が可能
クライアントとの意図の疎通が円滑
修正や調整の過程での無駄が少ない
4.3 費用対効果の最大化
目的に応じた適切な予算配分
必要十分な品質レベルの見極め
再利用や展開を考慮した制作設計
4.4 リスク管理
機密情報の取り扱いに長けている
著作権や肖像権などの権利処理に精通
トラブル発生時の対応力がある
4.5 終わりに
BtoCを得意とする制作会社は、大衆向けのクリエイティブ面で優れた作品を生み出すかもしれません。しかし、ビジネス映像においては、派手な表現力よりも、クライアントの要望を的確に反映するコミュニケーション力と、目的達成のための的確な表現力が重要です。BtoBに特化した制作会社は、その点において優れた実績とノウハウを持っています。
制作会社選定の際は、過去の実績の中でもとりわけBtoB案件の実績を重視し、そうした案件のコミュニケーション環境に習熟している制作会社を選ぶことを推奨します。
「得意分野」ほんとうのこと
BtoBビジネス映像にも会社案内、採用動画、マニュアルなど、数多くのジャンルがありますが、これらの中のジャンルを限定して得意分野をアピールする会社が多いのは、制作会社を探す人の心理を考えているためです。人は「何でもできます」と言われるより「これが得意です」と言われた方が信頼するからです。
しかし、実際は多くの映像クリエーターが、どんなジャンルでも一定以上の品位で映像をつくる自信を持っています。映像づくりには普遍的な技能というものがあり、ジャンルを問わず、本質的な価値が何であるかを知っているからです。
どうか信頼して、相談してみてください。
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