陳腐化
映像制作において、時代の流れと共に変化する要素を適切に扱うことは重要な課題です。例えば洋服や髪型、アクセサリーなどの持ち物は、流行の影響を強く受ける要素です。これらを最新のトレンドに合わせて映像に取り入れると、一見おしゃれに見えるかもしれませんが、その選択には大きな落とし穴が潜んでいます。陳腐化です。
若年層ほど顕著に
特に若年層をターゲットにした映像コンテンツの場合、この問題はより顕著になります。撮影時点で最先端だと思われた流行アイテムも、わずか1年も経たないうちに「なにこれ、古すぎ!」という反応を引き起こしかねません。そうなると、映像で紹介されている情報自体も時代遅れだと誤解されてしまい、コンテンツの寿命が著しく短くなってしまうのです。このような状況は、制作者にとっても視聴者にとっても望ましくありません。
商材自体の陳腐化が加速
一方で、最近のB2B(企業間取引)向けPR映像においては、この問題に対する認識が少し異なってきています。そもそも扱う商品やサービス自体が短期間で陳腐化してしまうケースが増えているため、映像の使用期間自体が1年未満と想定されることも少なくありません。そのため、細かな時代性にはあまりこだわらない傾向も見られるようになってきました。
短期的な要因
しかし、通年使用を想定した映像制作の場合は、依然として注意が必要です。例えば、季節感が強く出る服装は避けるべきだと、クライアントから要望されることも多々あります。夏服や冬服といった、明確に季節を特定できるような衣装は、映像の汎用性を大きく損なう可能性があるからです。
また、自動車や携帯電話といった、技術の進歩が速い製品も要注意です。これらは、映像の制作年代をすぐに特定されてしまう要素となりやすく、コンテンツの鮮度を保つ上で大きな障害となり得ます。
計画的陳腐化
ここで触れておきたいのが「計画的陳腐化」という概念です。これは、製品の寿命を意図的に短くする仕組みを製造段階で組み込んだり、新製品の発売に合わせて旧製品を時代遅れに見せかけたりすることで、消費者の新製品購入意欲を高めるマーケティング手法を指します。
私個人としては、このような手法を映像企画に取り入れたことはありませんし、そのような依頼を受けたこともありません。しかし、ネット上では、こうした戦略を用いた映像コンテンツをしばしば目にすることがあります。多くの場合、これらは広告会社が戦略的に提案しているものだと考えられます。彼らの真の目的は、短期間で何度も制作や改訂を行うことで、自社の売上を増やすことにあるかもしれません。
長く価値がつづく映像づくりが基本
もちろん、クライアントが十分に理解した上で、敢えて時流に乗った映像制作を望むのであれば、それは問題ありません。しかし、制作側の都合や隠れた意図によって、不必要に短命な映像コンテンツが生み出されることは慚愧に堪えません。映像制作に携わる私たちは、これらの点に十分注意を払い、クライアントにとって本当に価値のある、長期的に使用可能なコンテンツを提供したいものです。
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