ドキュメンタリー番組とは
一般的な定義でいえば、事実としてあった事、もの、人たちをカメラで捉え、録音した素材を切り取って再構成した映像プログラム、と言って差し支えないと思います。もちろんドキュメンタリーにもさまざまな手法がありますので、「再現」「証言」などが含まれていても差し支えないでしょう。 さて僕はこの「エマージェンシーコール」の放送をリアリタイムで視聴したのですが、歯に衣を着せずに(?)書けば「非常に不快な気持ち」で見続けました。あまりに不思議な作り方をしていたので、好奇心が勝り見てしまいました。どうして不快だったかというと、番宣のふれ込みがあたかもドキュメンタリー番組であるかのように伝えられていたことと、冒頭の「お断りテロップ」を見逃したこと、それに以下のふたつの要素です。
あからさまな吹き替えに感情移入できない
通報者の声がいかにもセリフ(原稿を読んでいる)でありながら、喋り方がリアル・シビアアクシデントを演出しすぎていて、嘘っぽく聞こえたこと。
いまどき「シネタッチ」はむしろヤラセっぽい
通報を受け捌く職員の映像も、今流行りのボケのシネトーンでドキュメント感を演出していたこと。 しかも「これ何カメ?」と思うような、カメラ割り、切り返し。この時期みんなマスクをしているから、もしかして映像も後撮りの再現フィルムで、職員の声も吹き替えじゃないのか?という疑念が湧きました。
お断りテロップ
2022年10月10日に放送された同番組では「プライバシー保護のため、通報は加工・吹き替えし内容を一部変更しています」とお断りてテロップを入れていました(僕は番組お終わりで初めて見つけた。ネットの書き込みをみると冒頭にもあったとう書き込みががあるので、見逃したかも)。 しかし、あにはからんや、同番組を視ての感想をネット上で検索すると、この番組をドキュメンタリーと勘違いして大感激した視聴者が大勢いたようです。
番組の装いがドキュメンタリー
NHKのこの番組の番宣では「ドキュメンタリー」という文字は出てこず「ノンフィクション」と書いてあります。(番組のメタデータではジャンルは「ドキュメンタリー・教養」に分類されて表示される) 「ドキュメンタリーだなんて言っていませんよ」ということでしょうか。 いかにもドキュメンタリーっぽいつくりであっても、冒頭、中程で時折「再現によるものです」とでも書けば、視聴者は半分フィクションであることを理解して視聴します。 しかし「全部ドキュメンタリー」と勘違いさせて視聴させるという姑息な手はいけません。「みんなわかっていますよ!」ならばOKなのですが、ネットに広がる感想はどうやら違います。
どうしてこういうつくりの番組がヤバイかというと、これはディープフェイク映像をつくる方法と同じだからです。ヒットラーがプロパガンダに映画を使ったことは有名ですが、あれはまさにディープフェイクです。今もそれと同じ技法を見破れない視聴者が多いことは、とても憂慮すべきことです。 ドキュメンタリーを装った創作映像を真に受けないでください。 企業映像によくあるやつです(笑
※2023年12月追記
役者が吹き替えしている「通報」の音声は、我々が聞けば明らかに芝居がかっていて創作であることがわかりますが、ネットでみつかる番組への意見、感想には通報が本物であるとの誤認が多く見られます。吹き替えであっても、通報内容がほぼ事実であることは(たぶん)間違いないとは言え、こうしたバレバレの役者の声に視聴者が心まで動かされていることは由々しきことです。本物のフェイクであれば容易に騙されてしまいます。
テロップ「プライバシー保護のため、通報は加工・吹き替えし内容を一部変更しています」が、吹き替えが一部であるかの誤解を生む事実誤認誘導をしています。
せめて「プライバシー保護のため、通報はすべて役者による吹き替えであり、内容は一部変更しています」で、どうでしょう。
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