今日は2025年1月29日。
PCを立ち上げ、ブラウザを開くと目に飛び込んでくるのは今、ある民放放送局のことばかりです。今日はそこにある週刊誌の訂正を糾弾する記事が加わりました。似たようなタイトル、似たような意見ばかりです。
テクノロジーは今、私たちの生活に不可欠な存在となっています。スマートフォン一つで世界中の人々や情報にアクセスし、コミュニケーションを図ることが可能となった現代。その基盤となっているインターネットは、私たちの生活を劇的に変え、便利で豊かな社会をもたらしました。しかし、この革新的な技術は、同時に社会に深刻な問題をもたらしているという側面も持ち合わせています。特に、インターネットがもたらす社会の分断と民主主義の危機は、現代社会が直面する最も深刻な課題の一つです。

情報の過剰とフィルターバブル
1990年代、インターネットの初期には、この仕組みから商業的な価値を産み出す方法が見つからず停滞しましたが、「パーソナライズ」の実現によって広告価値が見出され、そこに経済が生まれ、インターネットは一気に普及しました。
私たちはインターネットの普及により、膨大な情報にアクセスできるようになりました。しかし、その一方で、私たちは日々大量の情報にさらされており、そのすべてを精査することは事実上不可能です。そのためパーソナライズによる情報の選別がおこなわれ、そのアルゴリズムによってパーソナライズされた情報が提供される「フィルターバブル」と呼ばれる現象が生じています。
フィルターバブルとは、個人の検索履歴や閲覧履歴に基づいて、その人に合った情報のみが表示されるという現象です。一見すると、自分に必要な情報に効率的にアクセスできる便利な機能のように思えます。しかし、この機能は、私たちの視野を狭め、多様な意見に触れる機会を奪ってしまうという危険性を孕んでいます。
私たちは、自分の意見に賛同する情報ばかりを見せられ、異なる意見を持つ人々との対話から遠ざかってしまいます。結果として、社会はますます分断され、極端な意見が対立する状況が生み出されてしまいます。
フェイクニュースの拡散と陰謀論の蔓延
インターネット上では、根拠のない情報や誤った情報が拡散されやすいという特徴があります。いわゆる「フェイクニュース」と呼ばれるこれらの情報は、ソーシャルメディアなどを介して瞬く間に拡散され、エコーチェンバーと言われる反響が繰り返され、人々の間に誤った認識を広めてしまいます。
フェイクニュースは、政治的な目的で意図的に作られたものもあれば、単なる誤解や勘違いから生まれたものもあります。いずれにせよ、フェイクニュースは社会の信頼を損ない、人々の間に不信感を生み出します。
また、フェイクニュースの拡散に伴い、陰謀論が蔓延する傾向も強まっています。陰謀論は、社会の複雑な問題を単純な陰謀によって説明しようとするもので、根拠のない憶測や非科学的な主張に基づいています。陰謀論は、人々の不安や不満につけ込み、社会の分断をさらに深めます。
デマの拡散とハラスメント
インターネット上では、デマや誹謗中傷が拡散されやすく、個人や組織に対する名誉毀損やプライバシー侵害といった問題も深刻化しています。特に、ソーシャルメディアは、匿名性を悪用した誹謗中傷やハラスメントの温床となりやすいという特徴があります。
これらの行為は、被害者の精神的な健康を損なうだけでなく、言論の自由を脅かし、民主主義社会の基盤を揺るがす可能性があります。
ポリティカル・ポラリゼーションの加速
インターネットは、政治的な分極化を加速させます。ソーシャルメディア上では、政治的な意見が対立し、互いを攻撃し合う状況が頻繁に見られます。この状況は、政治的な対話を難しくし、合意形成を阻害します。
また、インターネットは、政治的な広告のターゲティングを可能にし、特定の層に対してだけ政治的なメッセージを届けることを容易にしました。この結果、政治的な議論はますます分極化し、社会の分裂を深めています。
民主主義の危機
これらの問題が積み重なる結果、民主主義が危機に瀕しているという状況が生まれています。民主主義は、多様な意見が対立し、議論を通じて合意を形成していくプロセスです。しかし、インターネット上の情報環境は、このプロセスを阻害する方向に働いています。
フェイクニュースや陰謀論の拡散、政治的な分極化、そしてハラスメントといった問題により、人々は互いを信頼できなくなり、建設的な対話が難しくなっています。この状況は、民主主義の根幹を揺るがし、社会の安定を脅かす可能性があります。
課題と対策
インターネットがもたらす社会の分断と民主主義の危機に対処するためには、多角的な取り組みが必要です。
プラットフォーム企業の責任
ソーシャルメディアなどのプラットフォーム企業は、フェイクニュースの拡散防止やハラスメント対策を強化する必要があります。なによりも、過度なパーソナライズ、思想的な面での選別機能を緩めるべきです。
政府による規制
政府は、インターネット上の言論の自由と表現の自由を保障しつつ、フェイクニュースの拡散やハラスメントを抑制するための適切な規制を検討する必要があります。またメガテックの過度な寡占状態は直ちに解消するべきです。
市民社会の活性化
市民社会は、多様な意見を尊重し、対話を促進するような活動に取り組む必要があります。
一般的には、こうした項目の中には必ず「メディアリテラシーを高めよう」という文言が入るのですが、メディアリテラシーを歪める最大の要因が、「パーソナライズ」という仕組みですから、私は敢えて掲げません。
この仕組みによって莫大な利益を得るメガテックと、それを規制するべき政府の責任です。彼らが提供しているインターネットとは、今もまだ未完のテクノロジーだと思うからです。
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