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「」に対する検索結果が431件見つかりました

  • 映像制作におけるスタッフ間コミュニケーションの変容

    対面からリモートへ 近年、映像制作現場におけるコミュニケーションは、かつての対面中心から、デジタルツール、特にメールに大きくシフトしています。クライアントもスタッフも、ほとんどの連絡をメールで行い、返信で処理を完了させるという状況は、もはや珍しいことではありません。 なぜこのような変化が起きたのでしょうか。一つには、WEBマーケティングの隆盛が挙げられます。私たちの会社もWEBマーケティングに力を入れるようになり、WEBリテラシーの高いクライアントが増えました。彼らは、様々なWEBコミュニケーションツールを巧みに使いこなし、効率的な情報交換を可能にします。 eメールワーカー このような状況を、私は「eメールワーカー」と呼んでいます。私もその一人です。業界によっては様々な特性をもったチャットサービスを利用している人の方が多いかも知れません。 eメールワーカーの特徴は、場所や時間に縛られず、いつでもどこでも仕事ができる点にあります。スマートフォンでメールをチェックし、リアルタイムに返信。クライアント優先、スタッフは決済の緊急性を優先するなど、優先順位を明確にし、効率的な業務を行っています。 巧みなコミュニケーション 文章での誤解を防ぐために、図解を用いたり、必要に応じてテレビ会議でコミュニケーションを取ったりするなど、様々なツールを駆使することで、より円滑な情報共有を実現しています。しかし、初回打ち合わせや重要な節目では、必ず対面でコミュニケーションを取り、お互いの理解を深めることを大切にしています。 デスクに居なきゃ仕事にならない!? かつては、「デスクに居て仕事になるか!」と怒られたものですが、今では「わざわざ出掛けて、何しに行くんだ!?」と言われる時代になりました。映像制作は、リアルなコミュニケーションが不可欠だと考える人も多いでしょう。しかし、WEBツールを効果的に活用することで、より効率的で正確な制作が可能になると考えています。 とはいえ、会うのがいちばん 撮影現場でのリアルなコミュニケーションや、お客様の笑顔を直接見ることができる喜びは、やはりかけがえのないものだと感じています。 映像制作におけるスタッフ間コミュニケーション 映像制作現場におけるコミュニケーションのデジタル化は、もはや避けられない流れとなっています。メールを中心としたコミュニケーションは、迅速性や効率性をもたらす一方で、人間関係の構築や、微妙なニュアンスの伝達といった面では、課題も残ります。

  • 課題解決のための動画制作・映像制作

    爆弾発言ですが BtoBビジネスにおいて、映像制作会社はクライアント企業のご担当者の方々の指示のもと、仕事を進めるのが一般的です。しかし、率直に申し上げると、私どもはご担当者の方の指示のその先を見ています。これは業界ではタブーな話かもしれませんが、初めてこのことを明かしたいと思います。 最も重要なこと:課題解決と最大限の価値提供 私たちが仕事を引き受けた際、真っ先に目指すのは、クライアント企業が抱える課題を解決することです。最高のソリューションを提供し、クライアント企業に最大限の価値をもたらすこと。これが私たちの唯一無二の目標です。 「ご担当者のことはどうでもいいのか?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。決してそんなことはありません。むしろ、ご担当者の方こそが最も大切な存在です。 なぜ矛盾するようなことを言うのか。それは、クライアント企業に最適なソリューションを提供することが、ご担当者の方にとっても最大の喜びであり、願いだからです。社内での評価向上、昇進、そして企業への貢献。これらは、ご担当者の方のモチベーションを大きく左右する要素です。 動画・映像制作はコンサルティング事業である 映像制作は、単に映像作品を制作して納品するだけの仕事ではありません。私は、映像制作を一種のコンサルティングだと考えています。クライアント企業が抱える課題を解決するためには、提示された課題だけでなく、潜在的な課題も見つけ出し、最適な解決策を提案し、形にする必要があります。 また、コストパフォーマンスも重要な要素です。無駄な要素はしっかりと指摘し、「これは必要ないのでは?」とハッキリと意見を述べることもあります。この過程で、ご担当者の方と意見が食い違うことも少なくありません。 「そんなことは頼んでいない」「これは決まっていることだ」 ご担当者の方のアイデアが、必ずしも課題解決に繋がるとは限りません。そんな時でも、私たちは率直に意見を伝えます。もちろん、直接的な言い方は避け、暗に伝えることもあります。 指針はただ一つ:クライアント企業とご担当者への貢献 私が仕事を進める上で最も大切にしているのは、「クライアント企業にとって本当にためになるか」ということです。これは、「ご担当者の方にとって本当にためになるか」ということと、イコールだと考えています。 たとえ意見が対立することもあっても、私は誠実に自分の考えを伝え続けます。なぜなら、私は、ご担当者の方にも必ず理解していただけると信じているからです。 そして、私は今、この信念を貫き通すことで、この仕事を続けることができていると実感しています。これからも、私はこの信念を胸に、映像制作に取り組んでいきます。

  • 音から映像へ、動画・映像制作への道のり

    私が現在映像制作業界で活動するきっかけとなったのは、大学時代のアルバイト経験でした。具体的には「ミキサー」と「AD」(アシスタントディレクター)という二つの役割を担当していました。ある地方ラジオ局でのこのアルバイトでは、主調整室(通称マスター)に設置された調整卓に座り、フェーダー(音量調整用のツマミ)を操作する重要な任務を任されていました。この経験が、後の私のキャリアに大きな影響を与えることになったのです。 調整室:熟練の技が光る舞台裏 調整室での仕事はまさに職人技の見せ所でした。アナウンスブースで話すタレントのマイク以外に、音源として用意されていたのは、2台のターンテーブル(アナログレコード盤再生機)と4台のオープンリールテープレコーダー(再生専用機)でした。ミキサーである私の役割は、これらの機器を巧みに操作し完璧なタイミングで音を送り出すことでした。 例えば、レコードを使用する際はターンテーブルに載せアームを手で持ち上げ、盤面の溝に針を慎重に落としながら、放送する曲の開始位置を探します。見つかったらそこに針を載せ、ターンテーブルを約1/3回転戻してスタンバイボタンをONにします。この準備によりディレクターのキューが出るとすぐにフェーダーをUPし、音を送り出せる状態になります。フェーダーには「アッテネータースタートスイッチ」という仕掛けがあり、その信号がターンテーブルに送られることで、レコードの再生が開始されるのです。 オープンリールテープ(業界では"6mm"と呼ばれていました)も同様の手順で準備します。番組の合間に挿入されるCMやジングル(コーナーを区切る効果音や効果音楽)は、それぞれ別々のテープに録音されているため、4台のテープレコーダーに掛けて、手動で音源の開始位置を探り、これも約1/3回転戻して停止させておきます。 緊張感と達成感:生放送の醍醐味 これらの音源を番組の進行に合わせて正確なタイミングで送出することが求められました。1/10秒程度の遅れでも、ディレクターから厳しい視線(「ギョロ睨み」と呼んでいました)を浴びたものです。アルバイト仲間の間では、「今日は20秒でテープの掛け替えをした」とか「テープレコーダー6台を使って20本のテープ素材を掛け替えた」といった具合に、技術の向上を競い合っていました。 生放送ならではの緊張感は格別でした。音源を間違えたり、秒数を読み誤って時報と重なりそうになったりと、失敗の思い出は数え切れません。しかし、そのような緊張感と、無事に放送を終えた時の達成感は今でも鮮明に覚えています。これらの経験は、私の職業人生に大きな影響を与えました。 デジタル時代における職人技の重要性 その後、映像の時代が到来すると言われ、私は映像業界へと転身しました。37歳で独立してプロダクションを設立し、現在に至ります。B2B専門の映像制作会社として活動しているため、生放送の機会はなくなりましたが、映像に付ける音に関しては今でも強いこだわりを持っています。 デジタル技術の進歩により、かつてのような職人的な勘や技術に頼る部分は減少しました。しかし、その一方で、デジタル機器の精度や機能に過度に依存するあまり、視聴者や人間の感性に適した音声調整ができていないケースも見受けられます。例えば、音楽の挿入タイミングやフェードアウトの長さ、音量の変化などが機械的すぎて、そこに「表現」が欠けていると感じることがあります。 音と音の間合いは、その音の響きや韻によって微妙に心地よいリズムが生まれるものです。しかし、デジタル編集ではすべてを正確なタイミングで配置してしまう傾向があります。MAスタジオの若いオペレーターの中には、そのような機械的な操作こそが正しい技術だと思い込んでいる人もいるようです。 ナレーションとBGMの音量バランスについても、一度設定したらそのままにしてしまうケースをよく目にします。制作される映像の内容をよく理解し、音声にも細心の注意を払えば、このような無頓着な対応はできないはずなのですが。 音声トラックの重要性を再認識する 最近のショートムービーでは、ナレーションもSE(効果音)も使用せず、ただ1曲の音楽を大音量で流すだけ、という作品を多く目にします。しかし、映像には無限の可能性があります。そこに丁寧に音を重ね合わせていけば、より豊かで魅力的な表現が可能になるはずです。 デジタル時代だからこそ、人間の職人技や感性を大切にし、それらをデジタル技術と融合させることで、より質の高い映像作品を生み出せると信じています。音声トラックは、映像表現の重要な一部であり、その可能性を最大限に引き出すことが、私たち映像制作者の使命だと考えています。 今は音楽作りと同様に映像・動画の音の世界はコンピューターが支配しています。しかし、そこに人間ならではの「ゆらぎ」が織り混ざることで、気持ちが良いノリが生まれることを私たちは知っています。

  • 映画館でなければ伝わらないこととは

    新型コロナ感染症蔓延のためシネマコンプレックスはもちろん、ミニシアターのような映画館も休館が続いています。経営が苦しくなった会社がコンテンツをネット配信して収益を上げようという動きに対して、井筒監督は「映画は映画館で観なければわからない」と、インタビューに答えていました新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延により、大規模なシネマコンプレックスから小規模なミニシアターに至るまで、多くの映画館が長期にわたる休館を余儀なくされています。この困難な状況下で、経営難に直面した映画会社や配給会社が、収益確保の手段としてオンライン配信に活路を見出そうとする動きが加速しています。 映画人の嘆き こうした流れに対し、著名な映画監督である井筒和幸氏は、あるインタビューの中で「映画は映画館で観なければ本当の良さがわからない」という趣旨の発言をしました。この主張は、果たして正当性があるのでしょうか?映画館という特別な空間でしか体験できない要素とは、一体何なのでしょうか? 映画館での鑑賞体験が持つ独自の価値について、様々な観点から考察してみます。 圧倒的なスケールで楽しむ大スクリーン体験 現代の映画制作技術は著しく進歩し、多くの作品が2Kや4Kといった高解像度で撮影・編集されています。確かに、家庭用の4Kテレビがあれば、理論上は映画館と同等の解像度で作品を楽しむことは可能です。しかし、現実的には、ストリーミング配信の場合、通信環境の制約から、フルHD(1080p)程度の画質が限界であることが多いでしょう。 ダウンロード視聴であれば4K画質の再現は可能ですが、ここで問題となるのは、家庭用テレビのサイズです。さらに、オンライン配信コンテンツの多くは、スマートフォンやタブレット、せいぜいノートパソコンの13インチ程度の画面で視聴されているのが現状です。 映画の制作者にとって、これは作品の本質的な部分が「見えていない」状態にほかなりません。映画館の大スクリーンでは、観客は自然と画面全体に視線を動かし、細部まで注目することができます。これは単なる偶然ではなく、監督や撮影者が意図的に仕掛けた演出効果なのです。 対照的に、小さな画面での視聴では、視聴者は画面全体を漠然と眺めがちです。そのため、制作者が演出や俳優の演技を通じて伝えようとした重要な要素が、視聴者に気づかれないまま素通りしてしまう可能性が高くなります。結果として、映画が本来伝えようとしたメッセージや感動が、十分に伝わらない恐れがあるのです。 臨場感を高める立体的な音響体験 映画館の魅力は、視覚的な要素だけにとどまりません。音響効果も、作品の世界観を構築する上で極めて重要な役割を果たしています。確かに、家庭でも高性能なオーディオ機器を使用すれば、ある程度まで映画館のサウンド体験を再現することは可能です。 しかし、現実には多くの視聴者が、スマートフォンやパソコン内蔵の小型スピーカーで映画を楽しんでいます。このような環境では、中音域の音しか十分に再現されず、低音や高音、さらには立体音響効果が失われてしまいます。これにより、制作者が意図した音の広がりや臨場感、緊張感などが大幅に損なわれることになります。 ビジネス映像制作者の共感 この問題は、エンターテインメント映画の制作者だけでなく、企業向けの映像コンテンツを制作するクリエイターにとっても深刻な課題です。例えば、多大な時間と労力を費やして制作した企業PRビデオや製品紹介動画が、クライアントや視聴者によってスマートフォンの小さな画面で、しかも縦向きのまま視聴されているのを目にすると、「せめてスマートフォンを横向きにして見てください!」と叫びたくなる気持ちは、多くの制作者が共有するものでしょう。 集中して観る環境の重要性 映画館という空間が持つ最大の利点の一つは、観客の注意を作品に集中させる環境を提供できることです。制作者たちは、何ヶ月、時には何年もの期間をかけて、細部にまでこだわり抜いた作品を生み出します。その過程で、彼らは作品の隅々まで記憶に刻み込んでいきます。 井筒監督が強調したかったのは、おそらくこの点でしょう。作品の「隅」にまで魂が宿っているということを、観客に感じ取ってほしいという思いです。この点において、私も全面的に同意します。 スマートフォン時代の映像コンテンツの特性 現代社会ではスマートフォンで手軽に視聴できる、比較的「軽い」コンテンツが求められる傾向にあります。スマートフォンでの視聴を前提とした映像制作は、従来の映画制作者の視点から見れば、作品の質を「軽視」しているように感じます。 こうした状況に直面して、「それならもう映画制作をやめた方がいい」と感じる映画人の気持ちは、十分に理解できます。しかし同時に、新しい視聴環境に適応した新たな表現方法を模索する挑戦も始まっています。 映画館での鑑賞体験と、オンライン配信による視聴体験。それぞれの特性を理解し、両者の長所を活かした新しい映像文化の創造が課題です。

  • 0円から始められる映像制作ビジネス

    20世紀のこと 映像制作産業はかつては何千万円、何億円という投資が必要な設備産業でしたが、今では非常に特殊な分野を除いて、設備を持ってるだけでは映像制作はビジネスになりません。というより、映像制作ビジネスは、機材なしでも始められる時代です。 ハードウェアへの投資はリスク? Red Bullというスポーツドリンクがシェア世界1の会社が、実は製造工場を持っていない「マーケティング会社」であるということは有名です。 iPhoneやMacを販売するApple社も自社工場は持っていません。 ただし、いずれも商品を製造する根幹の技術や特許は自社で保持していますから、製造を受託する会社は、類似商品を製造販売できるわけではなく、マーケットの囲い込みはヌカリありません。 「頭脳」こそが設備 映像制作ビジネスは設備投資0円からでも可能です。でも、頭脳を使って映像をアウトプットするためには、ほんのちょっと機材が必要です。これを外注すると利益が消えてしまいますので、少しは設備投資した方が得です。 映像制作ビジネスでお金を生み出す部分、つまり「付加価値」が付加される項目を列挙すると。 ①企画を生み出す技術・技能(アイデア、シナリオなど) ②演出(絵コンテ、撮影指示、編集指示、録音指示)する技術・技能 ③企画・制作・撮影などをマネジメントする技術・技能 ④出演者をマネジメントする技術・技能 ⑤撮影(カメラ、照明、美術など)する技術・技能 ⑥CGやアニメなどを作成する技術・技能 ⑦編集する技術・技能 ⑧音声を付加する技術・技能 ⑨要望される納品形態に変換する技術・技能 付加価値ビジネス ①②③④は設備不要 ⑤⑥⑦⑧⑨は設備機材が必要ですが、機材よりも人的な技量こそが大きな付加価値です。金額を出せば高スペックな機材が購入できますが、ビジネス映像に求められるのは8Kなどのハイエンドな画質管理や前衛的な編集技術ではありません。 いくら高額な機材を揃えても、結局映像制作に肝心なのは、制作する人の頭脳とセンスです。

  • 動画・映像制作見積書と契約の締結

    映像制作業務は案件内容を規定する書類をつくることが難しいため、これまで口約束で仕事が始まることが大半でしたが、近年ようやく契約書を交わすことが多くなってきました。 ところが、広告代理店との取引で多いのですが、実際には書類はカタチだけで、請け負う作業内容は発注後に詰めていく・・・というパターンが今も多いのが実情です。これには映像ソフトというプロダクツならではの特性があるからです。 インターネットを通じて、取引実績がない、面識がない業者に制作を発注される場合は、制作内容や金額についてすれ違いが生じないために、できるだけ客観的な形でエビデンスを残したいものです。 映像制作契約の2つのパターン 映像制作の契約には、大きく分けて以下の2つのパターンがあります。 詳細な契約書 業務内容、納期、対価などを詳細に記載した、一般的な契約書です。 発注書 納品物、金額、納期のみを簡潔に記載した、覚書程度の書類です。 何度目かの取引で相互の信頼関係がある場合は「発注書」でも問題ありませんが、一般企業の方が初めて映像制作会社と取引する場合には、詳細な契約書を締結することが推奨されます。そのためにはまず、予算を算定する仕様書と見積書が必要です。 映像制作の「仕様書」とは? 工業製品のような具体的な製品と異なり、映像作品には明確な「仕様」を定義することが難しい点が特徴です。では、映像制作の「仕様」とは何なのでしょうか? シナリオが果たす「仕様書」の役割 映像制作の「仕様」に相当するのが、シナリオです。シナリオは、映像の内容、ナレーション、音楽、効果音などを文字で記述したもので、映像作品のイメージを共有するための重要な書類です。 シナリオは、以下の情報を提供します。 何を撮るのか:  撮影箇所、撮影日数や機材規模、スタッフ数が読み取れます。 どう撮るのか:  追加の機材やスタッフ、日数が必要か読み取れます。 イラスト、CG:  製作規模が読み取れます。 ナレーション・音楽:  ナレーターの人数、ランクや楽曲数などが読み取れます。 他 こうして、このシナリオを「仕様書」として、撮影に要する日数やイラスト点数、経費などから見積書を作成します。 シナリオの作成における課題と見積書の問題 シナリオの解釈は主観的な要素が強く、人によって理解が異なる場合があります。そのため、シナリオからイメージする映像が、必ずしも発注者の期待に完全に一致するとは限りません。 また、シナリオから具体的な制作スケジュールや費用を算出するためには、経験に基づいた判断が必要となります。そのため、異なる制作会社が同じシナリオに対して異なる見積もりを出すことも珍しくありません。 シナリオ作成の費用と契約のジレンマ シナリオの作成には時間と労力がかかります。しかし、まだ契約が成立していない段階で、シナリオ作成費用を負担することは発注者にとっては大きなリスクとなります。 一方で、制作者側にとってもシナリオを作成せずに制作を開始することは、納期遅延や品質低下につながる可能性があります。この「シナリオがないと見積もりができない」「見積もりがないと発注できない」という状況は、映像制作業界における永遠のジレンマです。発注側と受注側の信頼によって乗り越える、映像制作第一の関所と言えます。 広告業界の実情 広告代理店との取引では納期が短いことが多く、シナリオ作成に十分な時間を割くことが難しいのが現状です。そのため実際には、長年の取引での信頼のもと契約書は形だけというケースが少なくありません。 まとめ 映像制作の発注では、契約からシナリオ作成までの間に様々な事情が絡み合っています。発注者と制作者が円滑なコミュニケーションによって信頼関係を構築して、それぞれの期待を共有することが、成功の鍵となります。 弊社では担当のプロデューサーが丁寧にご案内します。

  • カメラワークによる感情表現

    映像表現の核となる技術 カメラワークは、映画やドラマにおいて、登場人物の感情を効果的に表現する上で欠かせない要素の一つです。静止画とは異なり、動的な映像だからこそ表現できる、感情の深みや複雑さを伝える上で、カメラワークは多様な可能性を秘めています。 カメラワークが感情に与える影響 近接性と距離感: クローズアップ: 人物の顔のアップは、細やかな表情の変化や心の動きを捉え、観客を感情に引き込みます。恐怖、喜び、悲しみなど、基本的な感情だけでなく、複雑な心の揺れ動きも表現できます。 ロングショット: 広大な風景の中に人物を捉え、その人物の孤独感や無力感を強調したり、逆に、自然との一体感を表現したりします。 アングル: アングル: カメラの角度を変えることで、人物に対する観客の印象を大きく変えます。 俯瞰: 人物を見下ろすようなアングルは、人物を小さく見せ、無力感や悲哀を強調します。 仰角: 人物を見上げるようなアングルは、人物を大きく見せ、威厳や力強さを強調します。 動き: パン: カメラを水平に動かすことで、空間の広がりや、複数の登場人物の関係性を表現します。 チルト: カメラを上下に動かすことで、人物の威圧感や、小さな存在感を強調します。 ドリー: カメラをレールの上で移動させることで、まるで登場人物と一緒に動き回っているような臨場感を生み出します。 速度: スローモーション: 時間をゆっくりと進めることで、一瞬の出来事を強調し、感情的な高揚感を演出します。 早回し: 時間を速く進めることで、退屈な時間を短縮したり、時間の経過を象徴的に表現したりします。 カメラワークの意図的な活用 例えば、ホラー映画では、暗い部屋でのクローズアップや、突然のカメラの動きで恐怖感を煽ります。ラブストーリーでは、二人の人物がゆっくりと近づいていく様子を、スローモーションで表現することで、二人の間の甘い感情を表現します。 構図による感情表現 カメラワークと並んで、映像表現において重要な要素の一つが「構図」です。構図は、画面内に何をどのように配置するかを決定し、観客の視線を誘導し、感情を喚起する上で重要な役割を果たします。 構図が感情に与える影響 バランス: 画面内の要素の配置によって、安定感や不安定感、緊張感などを表現できます。 左右対称: 安定感、調和、平和などを表現します。 非対称: 不安定感、緊張感、動的な状況などを表現します。 線: 画面内に現れる線は、視線を導き、感情を誘発します。 水平線: 平静さ、安定感、広がりなどを表現します。 垂直線: 強さ、力強さ、高揚感を表現します。 対角線: 動力、不安、変化などを表現します。 フレーム: 画面の端や枠は、登場人物を閉じ込めたり、開放したりすることができます。 閉じ込める: 孤独感、抑圧感、閉塞感を表現します。 開放する: 自由、解放感、希望を表現します。 空間: 画面内の空間の広さや深さは、登場人物の心の状態を反映します。 密閉された空間: 閉塞感、不安感を表現します。 開放された空間: 自由、解放感、希望を表現します。 構図の意図的な活用 例えば、ホラー映画では、画面の中央に人物を配置し、周囲を暗くすることで、恐怖感を高めます。ラブストーリーでは、二人の人物を画面の両端に配置し、徐々に近づけていくことで、二人の間の距離感を表現します。 構図とカメラワークの連携 構図はカメラワークと密接な関係にあります。例えば、クローズアップで人物の顔を捉える場合、顔の配置によって、その人物の心の状態を表現することができます。また、パンニングやチルトの動きによって、構図がダイナミックに変化し、感情的な変化を表現することも可能です。

  • 忍び寄るものを予感させる演出とカメラワーク、カット割り

    映画やテレビドラマを見ていると、主人公に対して誰かが忍び寄っていることを予感することがあります。もちろん、それは意図的に演出されているから感じるものです。視聴者に緊張感や不安を感じさせ、迫り来る危険を暗示するいくつかの典型的な技法を紹介します。 典型的な技法 陰影の強調 1. 背後からの照明 主人公の背後に光を当て、顔に影を作ることで、背後からの視線や存在感を暗示します。 2. 暗い部屋 照明を落とした部屋の中で、主人公が一人いる場面は、未知のものが潜んでいる恐怖感を高めます。 3. 影の動き 壁や床に映る影が不自然に動いたり、ゆがんだりすることで、見えない存在が近づいていることを暗示します。 音響効果 1. 不気味な音 足音、呼吸音、物音が不自然に聞こえることで、背後に何かがいることを暗示します。 2. 無音 突然の無音は、緊迫感を高め、次の音が鳴る瞬間への期待感を高めます。 3. 音楽 緊張感を高めるための不協和音や、不安感を煽るような効果音などが使用されます。 構図 1. 対称性 画面を左右対称に分割することで、不安定なバランスを作り出し、緊張感を高めます。 2. 閉じ込め 主人公が狭い空間の中に閉じ込められているような構図は、逃げ場のない恐怖感を表現します。 これらの技法は、単独で用いられることもあれば、複数の技法が組み合わされて使用されることもあります。 巧妙な演出によって、視聴者は主人公の置かれた状況に感情移入し、物語に引き込まれていきます。 その他、効果的な演出として以下のようなものがあります。 伏線 物語の序盤に、後の展開を暗示するような小道具やセリフを登場させることで、視聴者に謎を与え、緊張感を高めます。 視線の誘導 主人公の視線や、カメラの動きによって、視聴者の視線を特定の場所に誘導し、危険が迫っていることを暗示します。 色彩 暗い色調や、不自然な色の組み合わせによって、不穏な雰囲気を作り出します。 こうした演出の多くがカメラワークとカット割りによって操作されているものだということは、たぶん多くの視聴者が理解していると思います。実はこの「忍び寄るものがある」を演出するカメラワークやカット割法は意外にもバリエーションが数多くあります。 カメラワーク 1. POV(Point of View)ショット 忍び寄る人物の視点からのショットです。カメラが対象に近づいていくことで、誰かが接近していることを示します。 2. ドリー・イン カメラが被写体にゆっくりと近づいていく動きです。緊張感を高め、何かが近づいてくる感覚を生み出します。 3. ハンドヘルドカメラ カメラを手持ちで撮影することで、やや不安定な映像になります。これにより、忍び寄る人物の動きや緊張感を表現します。 4. ローアングル 地面に近い位置からのショットで、忍び寄る人物の足元や下半身を映すことで、その存在を暗示します。 5. シャドウプレイ 壁や地面に映る影を使って、忍び寄る人物の存在を示唆します。 6. フォーカスプル 背景にいる忍び寄る人物にフォーカスを合わせることで、その存在を徐々に明らかにします。 7. ダッチアングル カメラを傾けて撮影することで、不安定さや違和感を生み出し、何かがおかしいという感覚を与えます。 8. クローズアップとワイドショットの交互使用 被害者となる人物のクローズアップと、その周囲の広い空間を映すワイドショットを交互に使用することで、孤立感と脅威を感じさせます。 カット割り 1. クイックカット 短いカットを連続で繋げることで、緊迫感を高め、時間の経過を速く感じさせます。 2. クロスカット 異なる場所の場面を交互に切り替えることで、二つの出来事が同時に進行していることを暗示し、緊張感を高めます。 3. サブジェクトカット 主人公の顔と、危険な物体のカットを交互に切り替えることで、両者の関係性を強調します。 これらの技法は、多くの場合組み合わせて使用され、音楽や音響効果と相まって、視聴者に緊張感や恐怖心を抱かせる効果を生み出します。ディレクターやカメラマンは、物語の展開や求める効果に応じて、これらの技法を巧みに使い分けています。

  • どうしてテレビCMの制作費は高額なのか

    「テレビCMを制作して欲しい」 とクライアントから提案を求められると、広告代理店やPR会社は商品の競合やマーケットの特性を調査し、その分析結果から導き出したテーマやコンセプトを、CM制作会社の企画担当者に示して、具体的なテレビCMプランをつくるよう依頼します。 もちろん広告代理店社内で企画案を作る場合もあります。 制作会社はこの段階で通常、大枠の予算も提示されますので、制作会社は受注が見込める予算いっぱいを使い切る(もちろん利益を残して)企画・制作プランを考えます。これは経済論理から考えてあたりまえです。 たとえ具体的に金額を言われなくても、それまでの取引の流れから凡その予算は暗黙の了解がある場合も多くあります。    例えば1,000万円の制作予算 が見込めれば、その予算を使い切る証拠として、見積り明細書には相応の項目と妥当な金額が書き込まれていなくてはなりません。ですから、例えば撮影の項目にはカメラマン、カメラマンアシスタント、2ndアシスタント、ビデオエンジニア、オーディオ、照明マン、照明アシスタント、照明アシスタント2とか、どんどん並びます。 実際には要らないスタッフを書くなんてことはありませんし、見積書を埋めるための企画を考えるなんてことはしません。こうした予算が見込めるCMには、それに相応しいレベルのクルー・スタッフ布陣での制作を構想することは当たり前だからです。    全てがイメージ通りで破綻なく洗練されているのがCG スタッフがたくさん寄って集り、最高レベルの技術を投入しないとできない企画とは、どういう企画でしょう。簡単に言えば、それは「画面の中が全てイメージ通りで破綻なく洗練されている」企画です。作り上げる映像を企画のコンセプトにパーフェクトに合致させるには、例えばタレントであれば、その人選はもちろん、衣装やメーク、背景となる世界もすべてカスタムメイドするしかありません。タレントのスケジュールに合わせ、短時間に様々なプロフェッショナルが、自分の専門領域のみに専念して映像の世界観の作り込みに集中する体制が必要なのです。 背景が屋外であればロケーションコーディネータがロケ地と交渉して、撮影許可をとり、そのロケーションにとって完璧な背景を美術さんや仕出し屋さんの力を借りて作り出します。タレントさんにはスタイリスト、メイクアップアーチスト、ヘアメイクさんがつき、モニターを睨みながら衣服の皺、髪の毛1本の乱れも許しません。 CGやVFX、編集の技巧に関しては、デザイン性やオリジナリティある映像が求められ、今は単なる技術を習得したオペレータがいればなんとかなる時代ではありません。    パーフェクトな映像世界はブランディング上必須 一流企業のブランド広告であれば、こうしたパーフェクトな映像世界はブランディング上マストです。こうした映像世界が、そこにあるがままの街角やお店で簡単に撮れるわけではありません。とてつもない労力とお金が注ぎ込まれて、たった数秒の映像ができているのです。 ネットサーフィンすると「動画制作5万円!」という文字が飛び込んでくる今、どうしてCMの制作費だけは高額なの? 簡単に言ってしまえば、CMの制作見積書は現在の技術とセンスの最高レベルの映像制作を基準としているのです。    それも今は一部の大手の話 でも、高額な制作費があたりまえというのも今や大手クライアントや大手広告会社での話。こうした予算をもったCM制作案件はローカルではそう多くはありません。 ローカルでは企画の段階から、そうしたフルスペック・最高スペックの制作スタッフ布陣を必要とするプランは念頭から外しているのが現実。アイデアで勝負と言ってもいいかも知れません。販売促進への直結を求められる案件が多いローカルCMは、画像のパーフェクトさよりも、企画の面白さの方が重要視されます。   そこにあるがままの世界を切り取るCM 思い通りの映像世界を作り上げるには多くのコストが掛かりますが、そこにあるがままの世界を切り取って、あるいはちょっとだけ手を加えてそれがCMとして面白ければ、そのほうが良いかも知れません。    こうした事情を解った人たちが今WEB動画に注目 大手企業の企業CMのような完成度を求めるならば、ちゃんと予算を用意しなくてはなりませんが、WEB動画はワンカット、ワンカットの完成度よりも冒頭のインパクトと情報伝達性。SEOやターゲティングによって広告予算は格段に効率化できると考えるからです。

  • 二極化する映像制作見積書

    従来のプロダクションスタイルの見積書 従来のプロダクションスタイルは、大規模な制作体制と専門的な機材を用いて高品質な映像を制作することが特徴です。この方式での見積もり方法は以下のような特徴があります: a) 詳細な見積書作成: プリプロダクション、プロダクション、ポストプロダクションの各段階に分けて、詳細な項目ごとに費用を算出します。これには人件費、機材費、ロケーション費用、編集費用などが含まれます。 b) 人件費の細分化: ディレクター、カメラマン、照明技師、音声技師、編集者など、専門スタッフごとの人件費を個別に計上します。それぞれの経験や技術レベルに応じて異なる単価が設定されることが一般的です。 c) 機材費の明細化: カメラ、照明機材、音声機材などの専門機材の使用料を日数ごとに計上します。高品質な機材ほど高額になる傾向があります。 d) ロケーション費用: 撮影場所の下見、許可取得、会場使用料などを含めたロケーション関連の費用を詳細に計上します。 e) ポストプロダクション費用: 編集作業、カラーグレーディング、音声ミキシング、CG制作などの後処理作業に関する費用を細かく計上します。 f) 間接費の計上: 企画会議、打ち合わせ、進行管理などの間接的な作業に関する費用も計上します。 g) 利益率の設定: 上記の直接費用に加えて、一定の利益率を上乗せして最終的な見積金額を算出します。 新たな動画クリエータースタイルの見積書 一方、新たな動画クリエータースタイルは、個人や小規模チームによる柔軟な制作体制が特徴です。この方式での見積もり方法には以下のような特徴があります: a) パッケージ料金制: 制作の複雑さや動画の長さに応じて、あらかじめ設定されたパッケージ料金を提示することが多いです。例えば、「3分以内の企業PR動画」といった形で料金が設定されます。 b) 簡素化された見積書: 従来のスタイルと比べて、見積書の項目が大幅に簡素化されています。多くの場合、企画、撮影、編集という大きな枠組みでの料金提示になります。 c) 一人多役の人件費: クリエーター自身が企画、撮影、編集の多くを担当するため、個別の専門スタッフごとの人件費計上ではなく、トータルの制作費として計上されることが多いです。 d) 機材費の内包: 多くのクリエーターが自前の機材を使用するため、機材費は別途計上せず、制作費に内包されることが一般的です。 e) ロケーション費用の簡素化: クライアントの事務所や公共スペースでの撮影が多いため、ロケーション費用が大幅に削減されたり、制作費に含まれたりすることが多いです。 f) 編集作業の効率化: テンプレートやライブラリの活用により、編集作業が効率化されています。そのため、編集費用が従来のスタイルと比べて低く抑えられることが多いです。 g) リビジョン(修正)回数の明確化: 見積もりに含まれる修正回数を明確に指定し、それを超える場合は追加料金が発生する形式を取ることが多いです。 h) オプション料金の設定: 基本的な制作費に加えて、BGM制作、ナレーション、字幕追加などをオプション料金として別途設定することが一般的です。 i) 柔軟な料金設定: クライアントの予算や要望に応じて、柔軟に料金を調整する傾向があります。例えば、クライアント側で一部の作業を担当することで費用を抑えるなどの提案をすることもあります。 これら二つのスタイルの見積もり方法の違いは、制作体制の規模や柔軟性、使用する機材の違い、専門性の度合いなどから生じています。従来のプロダクションスタイルは、大規模で高品質な制作に適しており、詳細な見積もりにより透明性の高い価格設定が可能です。一方、新たな動画クリエータースタイルは、迅速かつ低コストの制作に適しており、シンプルで柔軟な価格設定が特徴です。 中間スタイル の見積書 近年、この二つのスタイルの中間的なスタイルも増えてきており、プロダクションの規模や制作内容に応じて、従来のスタイルと新しいスタイルの良い点を組み合わせた見積もり方法を採用するケースも見られます。 クライアントのみなさんは、制作の目的、求める品質、予算、納期などを考慮し、適切なスタイルを選択することが重要です。また、制作者側も、自身の強みや制作スタイルに合わせた見積もり方法を採用し、クライアントに分かりやすく提示することが求められています。 今後は、AI技術やクラウドサービスの進化により、制作プロセスがさらに効率化される可能性があり、それに伴い見積もり方法も変化していくことが予想されます。業界全体として、より透明性が高く、クライアントにとって分かりやすい見積もり方法の確立が求められていくでしょう。

  • 映像制作時の「映り込み」について

    ビデオ撮影時に収録している画像に意図しないものが入って(映って)いることを「映り込み」ということは、業界外の人にもわかっていただけると思います。今日は様々な映り込みについて考察してみます。改めて考えてみたら、結構な種類があるんですよこれが。そして「映り込み」に対する考え方、感じ方も時代とともに変化してきていることに、改めて気づきました。 映り込みのあれこれ 被写体に反射して映り込む 鏡や窓ガラス、金属製品にレンズを向けると、その表面に撮っているカメラやカメラマン、ほかの機材やスタッフが映っていることがあります。TV-CMや商品PRビデオでは、こうしたカットは昔も今も原則的にNGですので、角度を変えたり黒幕で遮ったりして映らないように工夫します。最近ではこうした作業が煩わしいので、予算があるTV-CMなどでは商品は3DCGで作ってしまうことが増えました。いっぽうロケもののテレビ番組では、こうした映り込みは今は全く気にしなくなりました。 ロケ隊が映り込む NHKの「ブラタモリ」では、メインカメラが出演者の動きや視線の向き、話の内容に応じて突然向きを変えることがしばしばあるので、そのたびに魚の尾びれのようにスタッフが右往左往する場面をよく見ます。NHKでさえそうですから、民放ではもうあたりまえになりました。これも昔はあまり見られないことでした。ひとつには、昔は事前下見や打ち合わせをした後で撮影することがあたり前でした。あらかじめカメラが向く方向にはスタッフや無用な機材を置かないようにしていました。今はアポなしで取材する番組も多いことから、何が起こるかわからない現場ばかりになりました。二つ目は今はカメラが安くなり、操作が容易でありながら高画質な映像が撮れるため、ロケ現場では何台ものカメラが回っているのが常識にさえなってきて、当然カメラがカメラを映してしまうことが増えたから。もうひとつは、そういう撮影の舞台裏を見せると視聴者が喜ぶ・・・という制作者の誤解があるのではないかと思います。テレビ番組ではロケ隊が映り込むことが容認されていますが、BtoBのPR映像では基本的にNGです。クライアントも快く思いません。試写時、ご担当の方が画面に映っている映像を上司の方が視れば「ここは削除して」と通常、言われます。 個人情報・マル秘情報が映り込む 「マル秘」などというのは赤いハンコを書類に押していた時代の言葉ですね。今は個人情報はもちろん、企業情報の漏洩はコンプライアンスとしてはもちろん、営業活動的にも致命傷になるリスクがあるため、オフィスでの撮影時などは「PCモニターにレンズを向けないこと」とか「デスク上の書類が映らないように」ということをよく言われます。これ、NTSC(640/720×480ピクセル)の時代なら「映っても読めませんから大丈夫」と言えたのですが、今は収録時4Kということも多いため、しっかり読めてしまいます。編集でボカすということも頻繁に行っています。 競合社の広告や製品が映り込む これは基本的に撮影時に避けますが、街のロングを撮ろうとするとビルの上にある看板などは避けようがないことも多々あります。いまは編集技術が進化していますので、ほとんどのものは修正(消す)で対応しています。ただ被写体やカメラが動いていると、その広告や製品も動いていますので、この動きをトラッキングしながら消す作業は、場合によっては非常に手間がかかる作業です。消さなきゃならないとわかっている時は、レンズを動かすのはやめましょう。また、消すと違和感ある映像になることもあります。注意が必要です。 通りがかりの人が映り込む テレビ放送の撮影や生放送で、意図的にカメラ前に出てきて「ピース!」とやる人は、映りたい!という意図を持っていると思われるので問題になりませんせんが、撮られていることに気づかずに映り込んでいて、あとで放送やネットで本人や知り合いが気づくということがあります。顔がわかったり、第三者が本人と特定できるものが映っていたらプライバシーの侵害。それを本人が指摘すれば何らかの対処をしなくてはなりません。ですから、屋外で人通りがあるような場所では広告のための撮影をする場合、人を止めたり、エキストラを起用するしかありません。なぜだか報道目的の番組素材や教育目的だと制限が緩かったりしす。 眼鏡レンズの反射 これは最初の「ガラスの反射」と同じことなのですが、最近はブルーライトをカットしたレンズが増えています。この眼鏡レンズにあたる自然光は反射すると青色になります。普通のレンズにあたる自然光では気にならないレンズへの映り込み(反射)が、青色ではちょっと気になることがあります。これは編集での修正が困難ですので、注意が必要です。

  • フェイク動画のつくり方

    フェイク動画の見分け方 1. ソースの確認 動画が信頼できるソースから提供されているかどうかを確認します。公式のニュースサイトや信頼できる団体からのものであれば、信憑性が高いです。 2. 映像の品質 フェイク動画はしばしば不自然な動きや色のズレ、ピクセルの歪みなどが見られます。特に顔の部分や背景の違和感をチェックします。また太陽の位置と影の方向に違和感があったり、影の向きがばらばらの場合は合成が疑われます。 3. 音声の確認 音声が映像と合っているか、音質が一貫しているかを確認します。音声と映像が合っていない場合や音声が途切れる場合は、フェイクの可能性があります。 4. 逆画像検索の使用 動画内の特定のフレームをスクリーンショットし、逆画像検索を使用してその画像が他の場所で使用されているかを確認します。これにより、動画が再利用されたものであるかどうかを確認できます。 5. メタデータの確認 動画ファイルのメタデータをチェックすることで、作成日時や編集ソフトウェアなどの情報を確認できます。メタデータが不自然である場合は、フェイクの可能性があります。 6. 専門ツールの使用 Deepfake検出ツールやAIベースのフェイク動画検出ソフトウェアを使用して、動画の真偽を判定することも有効です。例えば、Microsoftの「Video Authenticator」やDeepwareの「Deepfake Detection」などがあります。 7. コンテキストの確認 動画の内容が現実的かどうか、状況や背景が信頼できるかどうかを確認します。現実に即していない状況や過度に劇的なシーンは疑わしいです。 見分け方=欺き方 上記のような見分け方の裏を掻くことがフェイク動画のつくり方です。現在の映像技術を使って根気よく作り込めば、画像の不自然さを0にすることは可能だと思います。僕らプロでも判別不能レベルの映像は現実的に目にします。結局のところ精緻につくられたフェイクは「まず疑って掛かる」ことがなければ、人はあっけなく騙されます。騙されただけでアクションを起こさなければ実害はありませんが、今のSNSの仕組みでは再生回数が増えれば人目に触れる可能性が増大しますので、見てしまっただけですでに加担しているとも言えます。 騙されない方法 自分の全経験、全常識、全知識、全知見を動員してそこに映っている物や事が「なんか変」と気づくことが第一です。面倒ですが日常的に意識レベルを上げておく必要があります。変だなと思ったら「まず信じない」。その上で、その動画がどのような経緯で自分の目に触れているのかを、上記に従って再チェックする。そして集めた情報で判断する。白黒判断がつかないときは、法廷でよく行われる「証拠から除外」。記憶はしておいても、判断材料にしない、という行動しかないと思います。 近年、フェイク動画の技術が進化し、その影響が現実世界にも及ぶ事件がいくつか発生しています。以下はその一例です。 1. ナンシー・ペロシのスローモーションビデオ(2019年) アメリカの下院議長ナンシー・ペロシのスピーチ動画が編集され、彼女が酔っているかのように見せかけられました。この動画はソーシャルメディアで拡散され、多くの人々に信じられました。 2. ジム・アコスタのホワイトハウス記者会見ビデオ(2018年) CNNの記者ジム・アコスタがホワイトハウスの記者会見で質問する際の映像が編集され、彼がスタッフに対して攻撃的な行動を取ったかのように見せられました。この動画は広範に共有され、論争を引き起こしました。 3. ゼレンスキーの偽動画(2022年) ウクライナの大統領ヴォロディミル・ゼレンスキーが降伏を宣言するフェイク動画がロシアとの紛争中に作成され、拡散されました。この動画は短期間で否定されましたが、一部の人々に混乱を引き起こしました。 4. トランプのディープフェイク動画(2020年) ドナルド・トランプ前大統領のフェイク動画がいくつか作成され、彼が言わなかったことを発言しているかのように見せかけられました。これらの動画は政治的な目的で使用されました。 5. マーク・ザッカーバーグのディープフェイク動画(2019年) FacebookのCEOマーク・ザッカーバーグが、Facebookの利用者データを悪用していると自ら認めるフェイク動画が作成されました。この動画は、ディープフェイク技術の危険性を示す例として広く知られています。

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