top of page
採用動画のアプローチを考える
動画・映像は実際にはその状況事実がない場合でも、作る方法はさまざまにあり、理想的な状況を描き出すことができます。しかし、特に採用動画・リクルート映像については、私たち映像制作業界では現実的にないことを創作して理想を訴求するよりも、現実にある状況を利用して、その企業が素晴らしい企業であることを見せる方法が主流になっています。
【このページの目次】
-
採用動画におけるリアリティの意味と重要性
-
企業の現実から価値を見出すアプローチ
-
リアリティを活かした具体的な制作手法
-
視聴者との信頼性を構築するストーリー
-
注意点
【役立つヒント集】
1. 採用動画におけるリアリティの意味と重要性
映像から真実が透けて見える
企業PRビデオや採用動画において、多くの企業が理想的な状況を演出したいと考えるのは自然な発想です。しかし、映像には独特の特徴があります。それは、視聴者が無意識のうちに「真実」を感じ取ってしまうという性質です。私たちは日常的に映像に触れており、その経験から、作られた場面と自然な場面を直感的に区別する力を身につけています。
説得力とはなにか
たとえば、社員が笑顔で働いているシーンを撮影する場合を考えてみましょう。演技による作られた笑顔と、実際の業務の中で自然に生まれる笑顔では、視聴者に与える印象が大きく異なります。作られた笑顔からは違和感や不自然さが伝わり、かえって企業の信頼性を損なう可能性があります。一方、実際の業務中の自然な表情や会話は、たとえ完璧ではなくても、視聴者の心に響く説得力を持っています。
ありのままの姿を知りたいリクルーター
このリアリティの重要性は、現代のメディア環境においてさらに高まっています。SNSの普及により、人々は加工されていない生の情報に日常的に触れるようになりました。その結果、作り込まれた企業PRよりも、等身大の企業の姿に価値を見出す傾向が強まっています。特に若い世代は、採用動画・リクルート映像に描かれる企業の「ありのままの姿」に強い関心を持っており、それが信頼性の重要な判断基準となっています。
2. 企業の現実から価値を見出すアプローチ
あたりまえの中にある優れていること
企業の現実から価値を見出すためには、まず自社の「当たり前」を見直す視点が必要です。多くの企業では、日常的な業務の中に素晴らしい価値が埋もれています。しかし、それがあまりに日常的であるがゆえに、社内の人々はその価値に気づいていないことが少なくありません。
例えば、ある製造業では、ベテラン社員が若手に技術を伝授する場面が日常的に見られました。会社にとってはごく普通の光景でしたが、このシーンには「技術の継承」「人材育成への投資」「世代を超えたコミュニケーション」という重要な価値が含まれていました。また、ある小売業では、店舗スタッフが商品の陳列を微調整する姿が、「顧客への配慮」「細部へのこだわり」「プロフェッショナリズム」を物語る貴重なシーンとなりました。
優れた点を見出す映像制作者の視点
このような価値の発見には、外部の視点が効果的です。社内の人々が当たり前と考えている 習慣や文化の中に、実は他社との差別化要因が隠れていることが多いのです。それを発見するためには、自社の業務を客観的に観察し、そこに含まれる価値を明確化する作業が必要です。
この過程では、社員へのインタビューが重要な役割を果たします。日常業務の中で感じている誇りや、仕事のやりがい、同僚との関係性など、表面的には見えない価値を引き出すことができます。ただし、これは単なるヒアリングではなく、社員の言葉の背後にある本質的な価値を見出すプロセスです。
3. リアリティを活かした具体的な制作手法
即興性と計画性
リアリティを重視した映像制作では、計画的な即興性が重要になります。これは一見矛盾する表現に思えますが、実際の制作現場では両者のバランスが成功の鍵となります。
具体的には、まず撮影の大枠となる計画を立てます。これには撮影場所、出演者、主要なシーンなどが含まれます。しかし、実際の撮影では、この計画を柔軟に運用し、現場で生まれる自然な瞬間を捉える準備が必要です。例えば、会議シーンを撮影する場合、実際の会議の様子を撮影することで、作られた演出では得られない真実味のある映像が得られます。
自然なインタビュー
また、インタビューシーンでは、事前に質問項目を準備しつつも、対話の中で生まれる自然な反応を重視します。社員が自分の言葉で語る経験や思いには、説得力があります。特に、失敗や困難を乗り越えた経験、同僚との協力によって達成した目標など、リアルなストーリーは視聴者の心に強く響きます。
撮影技術面では、過度な演出を避け、自然光や実際の職場環境を活かすことが重要です。これは予算的な制約にもマッチしますが、それ以上に、視聴者に「ありのままの職場」を伝えるという点で効果的です。また、定点カメラやドキュメンタリースタイルの撮影手法を用いることで、より自然な雰囲気を捉えることができます。
4. 視聴者との信頼関係を構築するストーリー
信頼の醸成
リアリティを重視した映像制作の最終目標は、視聴者との信頼関係の構築です。これは単に企業の良い面だけを見せるのではなく、等身大の企業像を通じて、深い共感を得ることを意味します。
ストーリー展開において重要なのは、企業の「現在」だけでなく、「過去」と「未来」も含めた立体的な描写です。企業が直面している課題や、それに対する取り組みを正直に語ることで、視聴者は「この企業は誠実である」という印象を受けます。また、将来のビジョンや目標を語る際も、単なる理想論ではなく、現実的な課題と共に提示することで、より説得力のある内容となります。
ミスマッチを防ぐ現実主義的アプローチ
特に採用動画では、入社後のギャップを防ぐという観点からも、現実に基づいた情報提供が重要です。例えば、新入社員が直面する可能性のある課題や、それをサポートする体制について、具体的なエピソードを交えて説明することで、視聴者は自身の将来像をより具体的にイメージすることができます。
また、企業の社会的責任や地域との関わりなども、現実に基づいて描写することが重要です。小規模な活動でも、実際に行っている取り組みを誠実に伝えることで、企業の誠実さや社会貢献への姿勢を効果的に伝えることができます。
このような現実主義的アプローチは、短期的には派手さに欠けるかもしれません。しかし、長期的な視点で見れば、企業と求職者のミスマッチを減らし、持続的な人材確保につながる効果的な戦略となります。映像制作に携わるプロフェッショナルとして、私たちは表面的な演出よりも、企業の本質的な価値を引き出し、それを効果的に伝えることに注力すべきです。それこそが、企業の持続的な成長と、求職者の適切な職業選択を支援する道なのです。
5. 注意点
これまでの提案は、現在主流の考え方のひとつですが、必ずしもすべての企業や状況にあてはまるわけではありません。その企業が理想としている企業ミッションや訴求目的によっては、正反対の企画方法が有効な場合もあります。
bottom of page